ホルムズ海峡封鎖が本当に恐ろしい理由。「原油価格高騰」より深刻な世界経済の“信頼コスト”

 

「一点火災が全域炎上へ拡大している状態」にある中東の現状

そして最も危険なのは、この構造では、局地衝突が地域戦争へ発展しやすいことです。

例えば、レバノン南部での(イスラエルとヒズボラの)衝突が起き、それに対してヒズボラが報復するという、すでに頻繁に見ている事態が起これば、必然的にイスラエルによる対レバノン空爆が拡大し、恐らく地上作戦も行われることになります。

そうすると、イラン系勢力がこの争いに参戦することになりますが、それはイスラエル軍の介入を拡大させることになり、その拡大がイスラエルによるイラン攻撃へと発展することにより、現在、私たちが目撃しているように、ホルムズ海峡の緊張を生み、そして(親イスラエルの)米軍が介入するという連鎖が起こっています。

つまり現在の中東は、【一点火災が全域炎上へ拡大している状態】です。

ここにサウジアラビア王国やUAE、カタール、クウェートなどのスンニ派諸国が加わるような事態になると、一気に戦火は中東地域を飛び出し、地中海を介してアフリカ東部、欧州南部に広がり、ペルシャ湾を越えて中央アジア地域に拡大します。

そうなるともう世界的な戦争に発展する危険性が高まりますが、この状況を止めることができるのは、恐らくアメリカによる“中立的な”介入や、ロシアおよび中国の介入による休戦保証ですが、残念ながら、ロシアはウクライナに掛かりきりで、“同盟国”の危機に介入できていないことが明らかになっていますし、中国は軍事的な介入を“他の地域”において行うつもりはないため、実質的に“アメリカがどうするか?”が大事になってきます。

ではトランプ大統領のアメリカは何をしていて、どう動くべきなのでしょうか。

現在の米国の動きは、非常に複雑です。表面的には、空母攻撃群を展開して(イスラエル軍と共に)イラン攻撃に参加し、ホルムズ海峡の航行の自由を保障すべく、イランの革命防衛隊による封鎖に対抗する作戦を実施するという強硬姿勢を見せています。

しかしその一方で、実際には、“全面戦争回避”にもかなり神経を使っています。なぜなら、米国もまた、中東全面戦争のコストを理解しているからです。

もしホルムズ海峡危機が深刻化すれば、原油価格のさらなる急騰は免れず、これにより世界的なインフレが再燃する流れになります。そうなると、日本や欧州各国といった同盟国の経済の悪化を加速させて、対米不信が高まる恐れがあるだけでなく、ガソリン価格の高騰や戦費の著しい増大に加え、米軍兵士の人的犠牲が拡大した暁には、国内政治不安が深刻な状況に陥ります。

さらに現在、米国は【ウクライナ支援】、【インド太平洋戦略の充実】、そして【台湾有事や貿易戦争といった多面的な中国対応の徹底】も同時並行で進めているため、実際には中東地域、特にイラン対策に対して、無制限に資源集中できないというジレンマおよび現状が存在しています。

ゆえに、現在の米国の戦略は、“イランに対する圧倒的勝利”ではなく、“複数戦線を同時管理する戦略”へ移行しています。

そのため、米国の対イラン・中東外交の本音は、【“イランを崩壊させること”ではなく、“イランを暴発させないこと”】にシフトしていると見ています。

つまり両国とも、【全面戦争は望んでいないが、同時に、弱く見られることも避けたい】という矛盾に直面し、その結果、危機を長期化させ、解決の糸口を見いだせない状況に陥っていると言えます。

そのチョークポイントになっているのが、ホルムズ海峡を巡る争いです。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

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