無名の国が世界を驚かせる。W杯の「カボベルデ」が教えてくれたスポーツの新たな魅力

 

会場では午前の練習を終え会場から出てくる選手を呼び止めて、柵で仕切られた中でインタビューをする仕組みで、注目選手は複数のメディアに呼び止められ取材に応じ、また母国から取材が来ている選手は母国メディアからのインタビューに応える。

白人選手の中でワニア選手は目立つものの、出場選手中、成績はほぼ最下位だったから、注目する人はいない。

当然ながら会場から出てきたワニア選手と呼び止める人は誰もいない。

彼女もそれが分かっているのか、インタビューされる選手と私は無関係といった表情で足早に駆け抜けようとする。

そんな彼女に私は「ワニアさん、ワニアさん」と呼びかける。

正しい発音ではなかったのだろう。

彼女は気づかず、結局私は柵の外から彼女を追いかけるように走り「ワニアさん!」と呼んだことで、やっと気づいて「私?」というような表情を見せた。

日本人記者がなんで私を取材するのか、ちょっと戸惑っていた彼女。

やりとりをしていくと取材に応じるのが嬉しくなったようで、リラックスした雰囲気で話してくれた。

自国には大きな体育館がなく、ボールやリボンを上に投げる際に、大きな会場の天井の感覚がつかめず、本番が不安であるとの話をしてくれた。

体育館のない町から来たたった一人の黒人選手。

その孤独な闘いを書いた私の記事は、翌日のスポーツ新聞の紙面を飾り、カボベルデの国名を記事に刻んだ思い出として残っている。

ワニアは当時、アテネ五輪で同国初の体操選手であり、歴代最年少選手として出場し、開会式では選手団の旗手を務めていた。

アテネ五輪では、強豪国との差は歴然で、最下位だった。

しかし2006年のアフリカ体操選手権大会では金メダルを獲得し、2008年の北京オリンピックにも出場、選手団の旗手を務めた。

おそらく夢の舞台が彼女を育てていったのだろう。

カボベルデとの20年前の出会いがあって、今、その快進撃を応援している自分がいる。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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