自前のフィジカルAI
フィジカルAIとロボティクスが今後、日本経済の主軸産業になる。具体的にその中味を見ると、いかに国際的な影響力の大きいかが理解できよう。
一般的に「AI」(人工知能)が、今後の世界経済を動かすことは常識になった。すでに、チャットGTPなどで日常生活にまで入り込んでいる。これは、中央処理(クラウド)によって作動している。この裏で、膨大な電力が消費される。今、始まっている技術革新では、この矛盾を解決しよとしている。「中央処理・大量電力」に代って、「分散・小電力」の流れだ。入手した情報をクラウドへ送らず、現場のエッジで処理する分散型で、消費電力を大幅に削減する。これが、フィジカルAIの真骨頂である。
フィジカルAIの象徴例は、人型ロボットである。現在、世界に話題を提供している中国の人型ロボットの裏には、クラウドが控えている。これは、現場の情報に従って即時に判断して動くフィジカルAIではない。現場のエッジで処理する分散型フィジカルAIは、日本のラピダスが27年から量産化する2ナノ半導体の登場を待たなければならない。こうした肝心の技術情報は、社会へ伝わらずに間違った情報が飛び交っている。
分散型フィジカルAI半導体は、ラピダスの量産化によって「号砲一発」、世界的な動きになるが、すでにその前哨戦は始まっている。ラピダスと10年間の業務提携関係にある米国テンストレントが、ラピダスAI半導体を組込んだデータセンターを発売した。
テンストレントは6月30日、日本で高性能サーバーを本格展開すると発表した。同社によると、米エヌビィディアと比べて性能が3倍ほど高く、価格は4分の1程度に抑えられるという。テンストレントのサーバーは、米国エヌビィディアの高価なGPU(画像処理装置)を使わず、CPU(中央演算処理装置)によって操作できることだ。CPUへアクセラレーターを組込むのがテンストレントの技術である。こうして、世界を牛耳ってきたエヌビディアへ、強烈なライバルが登場する形になった。
テンストレントが、エヌビディアのライバルになるのは、技術体系の流れから言えば当然である。「集中から分散へ」「大から小へ」は、あらゆる技術の基本的な変化パターンである。コンピュータがパソコンに取って代わられるようなものだ。テンストレントへは、ラピダスが半導体を供給する。これまで、エヌビディアと一体化してきたTSMCへ大きな影響を及ぼすことになろう。
TSMCは、ロジック半導体の世界最大手である。事実上、市場を独占している。ロジック半導体は、演算や制御などのデータ処理を行う。スマートフォン、PC、サーバー、自動車の制御装置などで「頭脳」の役割を担う。一方、サムスンなどが手がけるメモリ半導体は、データを記録・保存する役割を持つ汎用品半導体だ。PCやスマホなどの「記憶」を担う中核部品である。ラピダスは、技術的に高度のロジック半導体でTSMCの牙城を攻める。ラピダスの背後には、テンストレントという強力な技術・販売の支援網が出来上がっているのだ。
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