【2.米朝、接近を探るトランプと距離を置く北朝鮮】
トランプ大統領は8月16日、韓国との合同軍事演習の縮小をヘグセス国防長官に命じたと表明しました。北朝鮮に配慮する姿勢を示すことで、金正恩氏をアメリカとの対話に引き出したいという狙いが透けて見えます。
8月17日から27日に予定されていた米韓合同軍事演習について、大統領は「不適切で敵対的なシグナルを北朝鮮に送るのは賢明ではない」と主張し、演習は8月21日終了へと大幅に短縮されました。
この方向転換自体は、実は既定路線だったのではないかと考えます。トランプ政権は2026年1月に発表した国家防衛戦略(NDS)の中で、北朝鮮抑止への米軍の関与を縮小し、韓国軍がより主体的に自衛にあたるよう促す方針をすでに示していたからです。
それでも、演習開始の直前というこのタイミングでの表明は、北朝鮮に対話の意思を改めて伝えるためではないかという憶測を呼んでいます。大統領自身、演習が始まる直前に「中止するには遅すぎるので、大幅に削減するよう指示した」とSNSに投稿しました。
トランプ大統領は秋にアジア歴訪を控えており、11月18日と19日には中国の深センで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議への参加を予定しています。この機会をとらえて北朝鮮との協議を模索しているのではないかという推測も出ているのです。
北朝鮮問題は第一次トランプ政権時代に積み残されたテーマであり、敵対関係の解消へ向けて協議を仕切り直す可能性は十分にあるでしょう。交渉が停滞するイラン問題から目先を変えたいという思惑も、そこには重なっているのかもしれません。
注目すべきは、北朝鮮側の立場の変化です。
北朝鮮は最近、南北統一という長年の看板を事実上放棄し、韓国を「敵対する別の国」と定義し直しました。自らを核保有国として位置づけ、核開発を進めるその立場を米国側が受け入れることを、対話の条件として掲げているとみられています。
呼応するかのように、トランプ大統領も2期目に入ってから北朝鮮を「核保有国」と度々呼ぶようになりました。歴代政権が踏襲してきた非核化目標の優先度が後退したと受け取れる発言を繰り返しているのです。
8月17日には韓国大統領府が「米朝首脳間の友好関係が対話につながり、朝鮮半島の平和と安定への議論が始まることを期待する」との声明を発表しました。
ただし、私が紛争調停の現場で繰り返し見てきたことですが、片方が同盟国よりも目先の「成果」を優先しがちな交渉者だと見抜かれた瞬間、相手はそこにつけ込んできます。
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