【3.中国:北戴河の密議と、9月の米中頂上会談】
中国の指導部が避暑地に集う恒例の北戴河会議が開催された模様です。10月に予定される第20期中央委員会第5回全体会議(5中全会)を控え、汚職摘発や党内規律の徹底を協議すると同時に、党や人民解放軍の幹部人事についても話し合った公算が大きいとみられています。
外部から確認できる情報は限られていますが、5中全会を控えている以上、党・軍の幹部人事や権力継承が議論された可能性は否定できません。現時点で習近平氏の後継者と目される人物は見当たらず、2027年の党大会で習氏がさらに長期政権を目指すとの見方が強まる一方、後継者問題がなお見えないこと自体が、中国政治の不確実性を高めています。
権力の継承問題は、独裁色の強い体制ほど答えを先送りにしがちなテーマです。実際、1980年にチトー大統領が死去した後の旧ユーゴスラビアでは、集団指導体制によってしばらく権力を維持したものの、1990年代に入ると経済危機や民族主義の台頭、共和国間の対立が重なり、国家の統合が崩れていきました。
後継者を明確にしないこと自体が直ちに危機を生むわけではありませんが、権力移行のルールが見えない体制ほど、移行期の不確実性は大きくなるものです。
後継者不在のまま4期目に入ることは、短期的な安定と引き換えに、中長期的な不確実性を積み上げる選択でもあると見ています。
中国にとって外交上最重要方針と位置付けられている対米関係も北戴河会議の議題に上った模様です。9月には習近平国家主席が訪米し、米中首脳会談を行う予定です。2026年5月には「建設的戦略安定関係」の構築で合意していますが、それ以降も安全保障や輸出規制を巡る対立は続いています。
米中間の対立・緊張の最大の火種は台湾問題です。習近平指導部は台湾の頼政権を「独立分子」と敵視し、米国に支援しないよう迫ってきました。
仮に、トランプ政権が習近平国家主席から何らかの譲歩を引き出すためのカードとして台湾への追加の武器売却に踏み切れば、中国側の反発は避けられず、米中首脳会談が成立しない可能性も懸念されます。
9月の米中首脳会談は、当事者同士が直接顔を合わせる貴重な機会である一方、儀礼的な握手の裏で本音がぶつかり合う場にもなります。
私の経験上、首脳会談の成果は会談当日ではなく、その前段階でどこまで実務者レベルの合意事項を積み上げておけるかでほぼ決まります。今回、習近平氏が国連総会での演説を見送ってまで訪米日程を米中会談に絞り込んだのは、それだけこの一回の会談に懸けているという意思表示にほかならないでしょう。
逆に言えば、この会談で目立った成果が出なければ、次に台湾問題が再燃したときの緩衝材が一つ失われることにもなりかねません。
米政治専門メディアのポリティコは8月17日、習近平国家主席が9月22日開幕の国連総会一般討論演説への出席を見送る見通しだと報じました。同氏は9月23日に訪米し、24日にホワイトハウスでトランプ大統領と会談、25日には離米する日程とされており、今回の滞在は事実上、米中首脳会談に限定される見込みです。ちなみに習氏が国連総会で対面演説を行ったのは2015年が最後となります。
11月に広東省深センで開かれるAPEC首脳会議には、トランプ大統領のほか、ロシアのプーチン大統領ら各国首脳の参加が見込まれる情勢です。習近平国家主席はそこで自由貿易やサプライチェーンの安定の重要性を説き、グローバルサウスの団結を促すとみられます。
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