【2.選挙の時計で動く戦争-ホルムズ海峡と期限の管理】
この混乱の震源地は、米国とイランの戦いです。
トランプ大統領は9月9日、原油価格は中間選挙の後に下がるとの見通しを示し、米メディアの一部は、戦争そのものも選挙が終われば早期に終わるとの趣旨を語ったと伝えています。9月14日には、「11月3日を過ぎれば石油価格は急落する」とSNSに投稿しました。
戦争の終わりと選挙の日程が、これほど近いところで語られること自体が重要です。
交渉の世界では、期限をどう扱うかが結果を大きく左右します。期限を自分から公にすると、相手はその日まで待てばよいと考え始めるからです。イランの側から見れば、11月3日という日付は、耐え抜くべき目安として受け止められかねません。
実際、イランは強気の姿勢を崩していません。革命防衛隊の報道官は9月9日、敵が2か所から3か所を攻撃すれば、イランは20か所を攻撃すると語ったと、イランのファルス通信が伝えています。
ホルムズ海峡では、事実そのものをめぐる争いも続いています。
イラン革命防衛隊は、「イランが航行を禁じていると主張する海域を通ろうとしたタンカーが機雷に触れて炎上した」と発表しました。
米中央軍はその主張を虚偽だと退け、「問題のタンカーは8月にイランのミサイル攻撃で航行不能となってオマーン沖で立ち往生していたところを、週末にイランの無人機が再び攻撃したのだ」と説明しています。
どちらの説明が正しいのか、現時点で独立して確かめる手段はありません。9月14日には、米国の無人艇を拿捕しようとした革命防衛隊の小型艇2隻を、米軍の無人機が撃破したとも報じられています。明らかに情報が錯綜しています。
海峡を通る船の数をめぐっても、見方は大きく割れています。
ロイター通信が船の追跡データをもとに伝えたところでは、9月15日にホルムズ海峡を通過した商品輸送船はわずか4隻でした。米国の当局者は、米軍の護衛のもとで1日40隻ほどが通航していると主張しています。「10倍もの開きがある数字が並ぶ」――これが今のホルムズ海峡をめぐる情報環境です。
米国内では、この戦争の代償が目に見える形で積み上がってきました。
米議会予算局、CBOは、2月末の開戦から8月1日までに、国防総省関連で約380億ドルの費用がかかったとする試算を公表しました。戦闘の強度が低い状態が続けば月20億ドル程度、7月並みの激しさが続けば月30億ドル程度の費用が、今後もかかり続けるとしています。
私が特に目を留めたのは、迎撃ミサイルに関する指摘です。
CBOは、2025年6月以降で米軍の迎撃ミサイルの在庫の半分から3分の2が使われ、元の水準に戻すには少なくとも5年かかるとし、弾道ミサイルや巡航ミサイルを大量に持つ中国との紛争が起きた場合のリスクにも触れています。
私には、中東で盾を使えば使うほど、東アジアで使える盾が薄くなるという問題に見えます。日本にとっても、決して他人事ではありません。
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