■周辺国による代理戦争の空白地帯になりかねないイラク
イラクが、この戦争のもう一つの舞台になりつつあることにも注意が必要です。
東西パイプラインを襲った無人機がイラク南部から飛び立ったとされる一方で、イランは9月14日から15日にかけて、イラク北部のスレイマニヤやアルビルにあるイラン系クルド人の反体制派の拠点を、ミサイルと無人機で攻撃しました。
イラクの領土は、親イラン勢力の発射台であると同時に、イランによる越境攻撃の標的にもなっており、バグダッドの中央政府はその両方を止められずにいます。国家が自国の領土で起きることを管理できなくなると、そこは周辺国の代理戦争の空白地帯になっていきます。
混乱を前にして、外交の窓口が閉じているわけではありません。ルビオ国務長官はオマーンのブサイディ外相と電話で協議しており、ロシアのラブロフ外相によれば、オマーンで予定されていた湾岸諸国とイランの会合は、数日延期されたとのことです。
その間も、米国はイランの資金源を締め上げる手を緩めていません。
米財務省は9月10日、トランプ政権が経済追放作戦と名付けた取り組みの一環として、イラクのカタイブ・ヒズボラやレバノンのヒズボラに関係する14人と5団体を制裁の対象に加えました。あわせて、イランとの取引を例外的に認める特別な許可についても、今後は原則として認めない方針を打ち出しています。
イラン産原油の輸出は大きく落ち込んでいるとみられ、8月の時点で積み出し量が開戦前の7分の1程度にまで減ったとの報道もありますが、正確な量は独立して確かめられていません。
9月14日には、イランの制裁逃れを支援したとして、ロシアの大手銀行VTBも制裁対象に加えられました。VTBはウクライナ侵攻を受けてすでに制裁を受けており、今回はイランとロシアを結ぶ資金の流れを断つ狙いがあるとみられます。
軍事の圧力、経済の圧力、外交の窓口を同時に動かすのは、交渉の定石です。ただ、選挙という期限が公に語られたことで、その圧力の効き目が相手に割り引いて受け止められかねない、そこに今の米国の難しさがあります。
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