米国、イラン、サウジ。「逃げ道」を失いつつある3つの国が「出口」を求めて取りかねない“極めて危険な賭け”

 

【3.出口のない圧力-IAEAの安保理付託とNPTの行方】

イランの逃げ道は、ウィーンでもう一段狭まりました。

IAEAの理事会は9月9日、米国、英国、フランス、ドイツが提出した、イランの核問題を国連安保理に報告し委ねる決議を採択しました。35か国で構成する理事会で、賛成は23か国、反対はロシア、中国、ニジェールの3か国、棄権は8か国でした。

イランの核問題が安保理に委ねられるのは2006年以来、20年ぶりです。決議は、イランが査察を受け入れず、核不拡散の義務を果たしていないとして、核施設へのアクセスと、保有する高濃縮ウランの正確な情報の提供を求めています。

イスラエルは、イランがなお440キロの高濃縮ウランを持っていると主張していますが、査察が止まっている以上、その量や保管場所を国際機関が確認する手段はありません。

イラン外務省のバガイ報道官は、イランに義務の違反はなく、今回の決議はIAEAの政治化を深め、核不拡散体制の土台を損なうだけだと強く反発しました。

では、舞台が安保理に移ったことで、何かが変わるのか。

私は、残念ながら大きくは変わらないと見ています。20年前の事例と比べると、その理由が見えてきます。

2006年に付託された際には、ロシアと中国も最終的には制裁決議に賛成し、その後数年にわたって、段階的に制裁を強める決議が採択されていきました。当時は、米国とロシア、中国の間に、イランの核武装だけは防がなければならないという最低限の共通認識がありました。

今回は、ロシアと中国が理事会の段階から反対票を投じており、その共通認識が大きく揺らいでいることがうかがえます。両国は安保理でもイラン寄りの姿勢を崩さないとみられ、新たな制裁に拒否権を行使することも考えられます。

プーチン大統領は9月1日、キルギスの首都ビシュケクで開かれた上海協力機構の首脳会議に合わせてイランのペゼシュキアン大統領と会談し、イランに必要な装備を供給していると語りました。両首脳の間では、ロシアが建設したブーシェフル原子力発電所の燃料交換についても話し合われています。

安保理のイラン制裁委員会も、議長や専門家パネルが不在で事実上機能していない状態にあると伝えられており、その専門家パネルの任期は9月27日に切れます。

こうした状況を見る限り、今回の付託は、イランの行動を変える実効的な手段というより、欧米がイランへの圧力を記録に残すための手続きに近いと私は受け止めています。

私が強い違和感を覚えた出来事もあります。

イランのエスラミ副大統領兼原子力庁長官が、9月14日に開幕したIAEAの年次総会に出席できませんでした。同氏は、2025年のいわゆるスナップバックで復活した国連制裁の渡航禁止の対象です。

開催国のオーストリアは当初、国連の委員会に例外措置を求めましたが、米国の反対で例外が認められず、結果としてビザが取り消されたと報じられています。これに対してイランはオーストリアの外交官を呼び出して抗議しました。

制度の手続きとしては、筋が通っているのかもしれません。しかし、査察を受け入れよと迫りながら、その核開発の責任者が国際機関の議論の場に出てくることを阻むのは、調停官の目から見ると、矛盾を抱えた振る舞いです。

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