【2-3.「戦争を終わらせたくない男」】
「手綱」の次に飛んできたのは、言葉でした。トランプ大統領は18日、SNSに、ゼレンスキー大統領は欧州から資金をもらっているので「戦争を終わらせたくないし、おそらく一度もそう望んだことはない」と書き込みました。ロシアの製油所へのウクライナの攻撃は、「米国を含む世界の軽油の市場」を深刻に傷つけているとも非難しています。
トランプ大統領による言葉での攻撃の背景には、ウクライナが製油所への攻撃を再開したことがあります。前号でお伝えしたとおり、ゼレンスキー大統領は15日、英フィナンシャル・タイムズ紙に、製油所への攻撃を控える措置は「終わった」と語り、同じ日にロシア中部のリャザンの製油所がウクライナによるドローンの攻撃を受けました。
一方、米CNNは15日、事情に詳しい関係者の話として、ウクライナは米国製のパトリオットの迎撃ミサイルを使い果たし、14日未明の弾道ミサイルの攻撃をほとんど迎え撃てなかったと報じています。これも一つの情報源に基づく報道ですが、ゼレンスキー大統領自身が8月に、必要な迎撃ミサイルの10分の1しかないと語っていたことと符合します。ウクライナから見れば、自らの盾は削られ続けているのに、相手の兵站を削る手だけを縛られている、という構図です。
ウクライナ軍参謀本部の発表を集計した分析によれば、ロシア軍の車両や燃料タンクの損失は、侵攻の初期の月1,000以下から、2026年の夏には月約1万4,000に達したとされます。
これはウクライナ側の推計で、第三者が確かめた数字ではありませんが、ウクライナが製油所と兵站という「後方」に戦いの重心を移してきたことは読み取れます。その後方を叩く手を止めろと言われることが、ウクライナにとってどれほど重い要求なのかは、想像に難くありません。
【2-4.「歴史的な過ち」と「ありがとう」】
トランプ大統領による口撃に対するゼレンスキー大統領の返し方は、なかなか巧みでした。同大統領は18日、米NBCの番組で、米国が正式にロシアの側に立てば「歴史的な過ち」になると述べ、トランプ大統領が決定を変えてくれることを望むと語りました。その一方で、米国がロシアのミサイル発射に関する情報の共有を再開してくれたことに「感謝している」とも述べています。
同じ日には、ウィトコフ特使、クシュナー氏と電話で話し、「平和は力と、信頼に基づく協力によってのみ実現する」と伝えました。非難と感謝を同じ日に並べるのは、関係を壊さずに異を唱えるための、外交の基本の作法です。
ここで一つ、言葉を正確にしておきたいと思います。
ゼレンスキー大統領は「共有が再開された」と述べましたが、トランプ大統領は一貫して「情報の共有は止めていない」と述べています。米政府の当局者も、情報の共有を打ち切ると脅したことはないと否定しました。
ゼレンスキー大統領は、共有は「短い中断」の後に再開され、「今は機能している」と説明していますが、中断の範囲や期間、誰の判断だったのか、そして今後も続くのかは、公表された証拠では確かめられません。
ベッセント財務長官は18日、ゼレンスキー大統領に対し、事実でない発言には「気をつけるべきだ」と警告し、スターリンクをめぐる非難を「無謀だ」と述べました。
米国とウクライナの関係は、今、互いの言葉の正確さを公に問い合う段階に入っています。これは、協力の関係が壊れる手前でよく見られる兆候です。
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