プーチンが持ちかけた三者会談にトランプと習近平は乗るか?国際交渉人が危惧する“席のない国”の頭越しで決められる新秩序の中身

 

3.当事者のいないテーブル-米中ロの三者会談案

【3-1.ヤルタの影】

ウォール・ストリート・ジャーナル紙が18日から19日にかけて報じたところによれば、プーチン大統領は10月9日のトランプ大統領との電話会談で、11月18日から19日に深圳で開かれるAPEC首脳会議の際に、習近平国家主席を交えた三者会談を開こうと持ちかけました。同紙が引用したロシアの情報機関の元当局者は、プーチン大統領がこれを「ヤルタ型の会議」として、世界を勢力圏に分ける機会と見ていると述べています。

米政府の高官は提案があったことを認め、トランプ大統領は同意していないが前向きかもしれないとしており、中国も反対していないと伝えられています。

ロシアのペスコフ大統領報道官は、会談そのものについても議題についても「まだ明確な理解はない」と述べ、ルビオ国務長官も19日、会談の話はあったが確定したかは知らないと語りました。

トランプ大統領は19日、記者団に、習主席が望むなら開く、核兵器と非核化について話すために開く、と述べています。しかし、ウクライナについては、その発言の中で触れていません。

【3-2.同じ器に、違う中身】

ここが、今週の最も重要な点だと私は考えています。同じ「三者会談」という器に、ロシアは「ウクライナ停戦」を入れようとし、米国は「核(軍縮・不拡散)」を入れようとしているのです。

確かに、核の議題には切実な理由があります。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によれば、退役して解体を待つものも含めた核弾頭の総数は、2026年1月の時点で、ロシアが約5,420発、米国が約5,042発で、中国は約620発と急速に数を増やしています。

米国とロシアの間に残っていた最後の戦略核の軍備管理の条約である新戦略兵器削減条約(新START)は、2026年2月5日に失効しました。この条約は、配備する戦略核の弾頭を1,550発、運搬手段を700基までとする上限を両国に課していましたが、その上限を法的に約束する条約がなくなったのです。

もっとも、ロシアが2023年に履行を停止して以来、現地での査察などの検証の仕組みは、失効の前からすでに止まっていました。

国連の中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)は、ニューズウィーク日本版のインタビューで、誤解や誤算から核兵器が使われてしまう危険は「非常に高まっている」と述べています。同氏が最も警戒しているのは、キューバ危機の後に米ソの間で作られたような、危機を止めるための仕組みが、今は米中の間にも米ロの間にも十分にないことだといいます。

三つの核大国の首脳が核について話すこと自体には、意味があります。しかし、調停の現場で私が最も恐れてきたのは、議題が決まらないまま、首脳の顔合わせだけが先に決まるという順序です。顔合わせそのものが成果として報じられ、中身は「これから詰める」となったとき、その場にいない当事者の運命が、既成事実として積み上がっていくからです。

私がナゴルノカラバフやエチオピア、イエメンなどの和平調停に関わったとき、何より神経を使ったのは、交渉の席に誰を座らせ、誰を座らせないかという入口の設計でした。入口で外された当事者は、出口でできた合意を決して自分のものとは受け止めません。

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