1.決着しない選挙
【1-1. イスラエル-宙づりの議会】
10月27日のイスラエルの総選挙は、2023年10月7日のハマスの奇襲の後、初めての国政選挙でした。中央選挙管理委員会の発表によれば、兵士などの「二重封筒」の票の集計が進み、開票率が97.3%に達した29日午後2時55分(日本時間同日午後9時55分)の時点で、ネタニヤフ首相の陣営が53議席、アイゼンコット元参謀総長の陣営が48議席、アラブ系の2党が合わせて19議席となっています。定数120の議会で過半数に必要な61議席には、どちらの陣営も届いていません。
政党別では、ネタニヤフ首相のリクードが27議席で第1党を保ち、アイゼンコット氏の中道政党ヤシャルが21議席、ベネット元首相とラピド元首相が組んだベヤハドが12議席で続きました。
与党の側では、極右のオツマ・イェフディートと超正統派の統一トーラー・ユダヤ教が各7議席、宗教シオニズムと超正統派のシャスが各6議席です。
野党の側では、民主党が8議席、イスラエル我が家が7議席、アラブ系では合同リストが11議席、ラアムが8議席となっています。
50万票を超えるとみられた二重封筒の票は、28日の深夜から集計が始まっています。イスラエルの報道機関イネットは、兵士の票が多い二重封筒の票によって、アラブ系や超正統派の政党の比重がやや下がる可能性を指摘していました。
実際には、28日の時点から陣営の間の議席は一つも動かず、陣営の中で、リクードとシャス、ラアムと合同リストの間で1議席ずつが入れ替わるにとどまりました。陣営の間の大勢は、ほぼ固まったと見てよいでしょう。
最終の議席は、残りの票の確認を経て、11月4日までに公式に公表される予定です。アルジャジーラによれば、ヘルツォグ大統領はその公表を受けて、来週から各党の党首との協議に入ります。
投票が締め切られた直後、イスラエルの主なテレビ局の出口調査は、アイゼンコット氏の陣営のわずかな優位を示していました。しかし、開票が進むにつれ、ネタニヤフ首相の陣営が上回る形に変わっています。
今回の選挙で最も目を引いたのは、アラブ系の政党の躍進です。解散前の10議席から19議席へとほぼ倍増し、タイムズ・オブ・イスラエル紙によれば、これまでの最多の15議席を大きく上回りました。
ネタニヤフ首相は投票日の夜、アラブ系の地域の投票率の高さを、選挙を「盗む」動きだと主張する動画を公開しています。
中央選挙管理委員会は、投票日の昼の時点で、ほかの政党から寄せられた苦情に対し、組織的な不正の兆候は見られないと説明していました。それでもリクードは、アラブ系の政党による選挙の「窃盗」の証拠を、警察、国内の治安機関シンベト、中央選挙管理委員会に提出するとしています。
英国のユダヤ系の新聞ジューイッシュ・クロニクルは、この「盗まれた選挙」という言い回しが、トランプ大統領のものを借りたものだと指摘しました。ネタニヤフ首相は、右派の陣営に「決定的な多数」があると述べ、「反シオニストの」アラブ系政党を含む政権を作ることは「考えられない」と警告しています。
一方のアイゼンコット氏は、予測どおりなら「責任あるシオニストの多数派」の勝利だと述べ、すべての国民に兵役を課す政権を作ると約束しました。ヘルツォグ大統領は28日、再選挙を避けるためにあらゆる努力をするよう各党に求めています。
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