【1-5.ブラジル-認めない敗者、受け入れる米国】
10月25日のブラジル大統領選の決選投票では、高等選挙裁判所の発表で、ルラ大統領が有効投票の51.79%を得て、48.21%のフラビオ・ボルソナーロ上院議員を破りました。
ブラジルの英字ニュースサイト、リオ・タイムズによれば、差は約440万票で、第1回の投票で首位だったボルソナーロ氏を、ルラ大統領が逆転した形です。前号でお伝えした直前の世論調査は、いずれも誤差の範囲での接戦を示していました。
ボルソナーロ氏は敗北を認めず、根拠を示さないまま不正を主張しています。米CBSによれば、ブラジルの最高裁は、選挙の当日に出した非公開の命令で、同氏に通常の旅券と外交旅券を差し出すよう求めていました。しかし、同氏と家族は27日にブラジルを出て、アルゼンチンとエクアドルを経由し、28日の朝に米国のマイアミに到着しました。
本人は「ブラジルから逃げたのではない」としていますが、米国務省の高官は、同氏と家族に米国の査証を出すと明らかにしています。
同氏は投票の当日の夜、選挙の無効を求めて法的な手段をとると支持者に語っていました。理由に挙げたのは、ルラ大統領の弁護士を務めた経歴を持つ最高裁のザニン判事が、投票の締め切りの時刻を延ばしたことです。延長は双方の陣営が求めていたもので、高等選挙裁判所の長官は、延長は結果に影響していないとしています。
トランプ大統領は根拠を示さずに選挙が「不正」だったとほのめかし、同氏の米国入りは「構わない」と述べました。ルラ大統領は、この出国を「恥ずべきこと」と呼んでいます。同氏の父のジャイール・ボルソナーロ前大統領は、2022年の選挙の後のクーデター未遂の罪で、懲役27年の判決を受けて自宅軟禁の下にあります。
旅券の提出を命じられる中で選挙に敗れた候補が国外に出て、それを大国が受け入れるという構図は、選挙をめぐる争いを国境の外へと持ち出すものです。命令がどこまで守られたのか、出国が法的に問題ないものだったのかは、公開された情報だけでは判断できません。米国とブラジルの関係は、これまでの関税をめぐる対立に加えて、敗れた候補への査証の発給と出国の経緯という新しい火種を抱えることになりました。
ルラ大統領の4期目は、グローバルサウスの声を束ねる外交を続けると見られており、11月にトルコで開かれる国連の気候変動の会議(COP31)でも、ブラジルは前回の議長国として重みを持ち続けます。
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