2.「選挙の後」に向けた神経戦-米国、イラン、そして湾岸
【2-1.短く、激しい作戦】
中東では、今週、「選挙の後」という言葉が、あらゆる動きの前提になりました。米ニューヨーク・タイムズ紙は21日、米当局者らの話として、米国とイスラエルの軍が、11月3日の中間選挙の後にイランへの攻撃を再開するための詳しい計画を作ったと報じました。
イスラエルの報道機関イネットが伝えたその内容によれば、核施設、エネルギー施設、ミサイルとドローンの戦力が標的として挙がり、一部の米当局者は、3日間の攻撃でイランの経済に打撃を与えれば、交渉で譲歩を引き出せると見ているとされます。ただし同紙は、トランプ大統領が実際に攻撃を承認するかは分からないとしています。
続いて米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米国が複数の湾岸の同盟国に、選挙の後の「短く激しい」作戦に備えるよう伝えたと報じました。ホワイトハウスは、「機微な軍事計画」についての論評を控えています。
トランプ大統領は25日、米FOXニュースに、イランとの合意か、イランに「とどめを刺す」行動かを考えていると語り、同じ日に「今日は攻撃しない」とも述べていました。
イスラエルのタイムズ・オブ・イスラエル紙の27日の分析によれば、トランプ大統領は空母セオドア・ルーズベルトの打撃群と、強襲揚陸艦マキン・アイランドを中心とする約1万人の海兵隊を中東に向かわせており、11月下旬には3隻の空母がイランの周辺にそろう見通しです。
同紙は、攻撃の標的として、エネルギー施設、ミサイルとドローンの戦力に加え、遠心分離機と濃縮ウランが置かれていると米国とイスラエルがみる、イラン中部ナタンズ近くの地下施設「ピックアックス山」を挙げています。
トランプ大統領は27日、イランは合意を望んでいるが、「選挙か何かを待っているのかもしれない」と述べ、選挙の後の攻撃については「何でもあり得る」と答えました。
ロイター通信は28日、米国の対イランの戦費が470億ドルを超え、国防総省の7月の見積もりを25%以上上回ったと、内部の数字をもとに報じています。そのうち290億ドル超が弾薬の補充に充てられており、前号でお伝えした「盾の算術」が、米国の財布をも削っていることがうかがえます。
クルド系のメディア、クルディスタン24によれば、イラン軍の統合参謀本部の議長であるアブドッラーヒ氏は24日、米国の軍艦が湾岸の海域に入ることを「いかなる状況でも」許さないと述べました。これは一つの報道機関が伝えたもので、ほかでは確認できていません。
インドの週刊誌ザ・ウィークによれば、イランの議員の一部からは、攻撃を受ければ核兵器不拡散条約(NPT)に基づく協力を止めるべきだという声も出ているとされます。
海の上でも、緊張は続いています。英国の海事機関UKMTOは29日、オマーンのハサブの北約9海里で船が燃えていると伝え、イランの革命防衛隊は、イランが認めていない「南の航路」を通ろうとしたタンカー3隻が機雷に触れて炎上したと主張しましたが、火災の原因、船の名前、乗組員の安否は確認されていません。
米国の側でも、足元の揺れが表に出ました。米CBSによれば、ヘグセス国防長官は28日、統合参謀本部で戦略と計画と政策を担うシルビア中将を、イランとの戦争に関する機密を漏らした疑いで解任しましたが、漏えいの事実関係は明らかになっていません。攻撃の計画が報じられる同じ週に、軍の戦略と計画を担う将官が外されたことになります。
イラン側では、交渉で物事を決める複数の決定権者(バックテーブル)の間で意思疎通ができていないのか、意図的に足並みを乱しているのかが見えません。
米イラン間の緊張緩和は、一筋縄ではいきそうにありません。
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