問題は「プーチンが犯人か否か」じゃない。ダム決壊を政治利用する“バカども”に覚える吐き気を催すほどの怒り

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6月6日に決壊した、ウクライナ南部ヘルソン州の巨大ダム。多くの市民が避難を余儀なくされるなど、その被害は甚大なものとなっています。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、このダム決壊を巡るウクライナ・ロシア両国の姿勢に「吐き気を催すほどの怒りを覚える」としてその理由を詳述。さらにトルコのエルドアン大統領が提案した、決壊の原因究明のための調査委員会設置の動きを紹介するとともに、おそらくその輪に加わることがないであろう日本政府に対して失望感を露わにしています。

ダム決壊を政治利用か。激化するウクライナ戦争で見捨てられる市民

「果たして戦争に勝者はいるだろうか?」

今週、調停グループの会合を行っている際、何度も尋ねられた質問です。

「核戦争には決して勝者はおらず、存在するのは敗者のみ」という表現がリーダーの間で流行っていますが、それは通常兵器を用いた戦争でも同じことが言えると思います。

そして戦争がプロの戦闘員、つまり軍隊の間でのみ戦われている場合は、まだ被害やコストはある程度の枠内でコントロール可能だそうですが、実際の戦争は、2023年も半ばに差し掛かった現在でも、多くの一般市民を巻き込み、多くの無抵抗の人たちの生命と生活を奪い、地球環境にも、築き上げてきた文化や文明も、生きるための作物もすべて奪い去っています。

とても精巧な誘導ミサイルや兵器でターゲットを確実に破壊できる技術も能力も備わっている最新鋭の軍をもってしても、この現実からは逃れられません。

もちろん、対人地雷や大量破壊兵器、Dirty Bombsのように意図的に人命を奪い、無差別に被害を与えることを目的とする輩も多数存在し、人々に恐怖心を植え付けて適切な思考能力を奪っていくという戦い方を行う集団もいます。

今週6月6日に発覚したウクライナ南部へルソン州にあるカホウカ(カホフカ)水力発電所の巨大ダムの決壊もその例外ではありません。

今、世間は「Who did this?(誰がやったか?)」の追求で応酬していますが、個人的には、その答えは対して大事だとは考えません。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアによるテロ行為であり、戦争犯罪だ」と糾弾していますが、それに呼応してくれるNATOの“仲間たち”はあまり存在していません。

起こったことに対する懸念の表明は、遅ればせながら到着し、6月8日にはブリュッセルで緊急支援国会合をNATOが開催するそうですが、その内容が本当に“緊急支援”にフォーカスしたものなのか、それともすでに始まっている“ポスト・ウクライナ戦争”の復興における主導権争いの一環として扱われるのかは、わかりません。

ロシアについては、直接的にプーチン大統領の発言は聞いていませんが、ぺスコフ報道官が「ウクライナの反転攻勢がうまく行っておらず、その結果、ロシアが編入した地を水浸しにして、一般人を巻き込むことにした非常に卑劣な行為」とウクライナによるテロ行為であることを示唆しています。

この“ウクライナによる仕業”という説については、否定はしませんが、恐らくウクライナに与していると言われている反プーチンの武装勢力による何らかの関与はあるのかもしれません。

ぺスコフ氏が“ウクライナの勢力”と呼ぶ際は、この反プーチンのロシア人武装勢力をも含めた呼称であることに注意しなくてはならないでしょう。

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