「AIは規制すべきか、それとも競争を優先すべきか」。この問いを巡り、米国のAI政策が大きな転換点を迎えています。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で著名エンジニア、投資家としても知られる中島聡さんが、AI規制をめぐるトランプ政権の“180度転換”の背景と、その裏側にある安全保障・産業競争・利益相反の問題について考察します。
私の目に留まった記事:トランプ政権がAI規制について180度の方針転換を始めた
● The Trump administration just did a complete 180 on AI regulation
トランプ政権がAI規制について180度の方針転換を始めたことを伝えるX投稿です。
トランプ大統領は16ヶ月前、就任初日にバイデン政権が出していたAI規制の大統領令を撤廃し、AIを「規制で止めてはいけない美しい赤ちゃん(a beautiful baby)」と表現していました。
当時、AI政策の責任者だったDavid Sacks(AI担当補佐官、AI政策のトップ)は、各カンファレンスで「規制緩和こそが米国がAI競争で勝つ唯一の道」と訴え続けていました。
ところが、ここに来てホワイトハウスの姿勢が大きく変わってきました。
White House National Economic CouncilのKevin Hassett所長(国家経済会議の議長、ホワイトハウスの経済政策の司令塔)は、フロンティアAI(最先端の大規模AIモデル)の安全性評価について「FDA(米食品医薬品局、薬の認可をする政府機関)の医薬品承認のような明確なロードマップ」を検討中だと語っています。
企業が新しいAIモデルを世に出す前に、政府が事前審査する仕組みを大統領令で作る案が浮上しているのです。
きっかけになったのが、AnthropicがリリースしたClaude Mythosという最新モデルです。
このモデルは、ソフトウェアの脆弱性(セキュリティ上の弱点)を発見し、それを悪用するスピードが、企業が修正パッチを当てるスピードよりも速いことが判明しました。
「サイバー攻撃の道具に転用されかねない」という安全保障上の懸念が一気に広がり、政権内の空気が変わったとされています。
組織面でも変化が起きています。バイデン時代に作られた”U.S. AI Safety Institute”(米AI安全研究所)は、トランプ政権下で”Center for AI Standards and Innovation”(CAISI、AI標準・イノベーションセンター)に改称されましたが、そのCAISIがGoogle、Microsoft、xAIとの提携を発表し、既に40以上のAIモデルについて公開前評価を完了したと報告しています。
人事面でも転換点がありました。3月には規制緩和を主導していたDavid Sacksがホワイトハウスを去り、現在はSusie Wiles首席補佐官(大統領の側近トップ)とScott Bessent財務長官(米国の財務省のトップ)がAI政策の中心に立っており、これが方針転換の追い風になっています。
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