多くの企業が巨額の資金を投じるなど、爆発的な成長を続けるAI市場。しかしここに来て、その投資が必ずしも期待通りの結果に結びついているとは言い切れない現実も見え始めているようです。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では著名エンジニアの中島聡さんが、UberやMicrosoftが直面している事例を取り上げ、AI導入を巡る企業の「試行錯誤の現状」を紹介。さらに「AIによる産業革命」が現在どの段階にあるのかについて解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:私の目に留まった記事:Uber’s COO says it’s getting harder to justify the money spent on AI
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
私の目に留まった記事:Uberの最高執行責任者「AIへの投資を正当化するのがますます難しくなっている」
● Uber’s COO says it’s getting harder to justify the money spent on AI
UberのCOO(最高執行責任者、会社の日々の運営を仕切るトップ)であるAndrew Macdonald氏が、社内のAI支出に対して「これだけ使っている割に、見合うリターンが見えない」と公の場で本音を漏らした、という記事です。AIブームの初期段階を象徴する大事な転換点だと思うので、紹介します。
きっかけは、4月にUberのCTO(最高技術責任者、技術部門のトップ)であるPraveen Neppalli Naga氏が、The Informationの取材に対して「Uberは2026年分のClaude Code(Anthropic社のAIコーディング支援ツール)の予算を、わずか4ヶ月で使い切ってしまった」と発言したことでした。Macdonald氏はこれを「頭が爆発するような瞬間だった」と表現し、社内ではAIのトークン消費量(AIモデルが処理する文字列の単位で、ほぼ使用量と直結する)と、それに伴うトレードオフ、たとえば人員計画への影響について真剣な議論が始まったといいます。
そこでMacdonald氏が社内のシニアエンジニアと話して気づいたのは、「トークン消費が増えても、それに比例してユーザーに届く便利な機能が増えているわけではない」という不都合な事実でした。本人の言葉では、「そのつながりは、まだそこに無いんですよ。暗黙にはより多くのものがリリースされているのかもしれない。でも、『AI使用量が上がったから、消費者向けの機能が25%多く出せている』というふうに、一本の線で結ぶのはとても難しい」。
Macdonald氏はさらに、AIは「ただ使うだけのユーザーの立場でいると、いろいろな使い道を思いつくのが楽しくて、まるでタダのように感じてしまう」と指摘します。しかし、最終的にその請求書を支払うのは会社です。Uberでは、現職のエンジニアの実に95%が月次でAIツールを使っており、CEO(最高経営責任者)のDara Khosrowshahi氏は今月の決算説明会で、「AI投資を吸収するために採用を絞っている」と明言しました。CEOの説明によると、Uberが新たにコミットしたコードのうち、約10%は既に自律的なエージェント(人の指示なしに自分で考えて作業するAI)が書いたものだそうです。
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「AIの上手な活用法」の模索段階にある社会で起きた当然の歪み









