ずさんすぎる中国経済が、世界をデフレ不況に追い込んでいる

 

東京市場の日経平均株価が1万7,000円を割り込むなど、今年に入って中国経済の減退が世界にさらに大きな影響を与え始めました。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、全ての原因は中国の「過剰生産」にあるとした上で、その調整の成否如何によっては世界大恐慌もありうると分析しています。

カタストロフィーの予感!?

今年に入って、本格的に「中国リスク」が世界でささやかれ始めた。世界の資源、商品などをガブ飲みしてきた中国が、ここにきて急に「もうお腹はいっぱい」とばかりに「輸入力を急速に落とし始めているのだ。その影響は、一番敏感な株価や市場商品に出てきた。まずは「元安」が加速し始め、それをきっかけに上海株式市場の総合指数が昨年末から18%も下落(1月中旬)した。中国市場の混乱は直ちに東京株式市場にも伝染し、1月18日の東京市場の日経平均株価は、3カ月半ぶりに1万7,000円を割り込んだ

また、中国国有の複合企業「華潤集団」傘下のセメント会社は人民元で為替差損が膨らみ、同社の香港市場の株価は一時上場以来の安値をつける結果となった。

また、「元安」進行を懸念する中国航空会社は10億ドルの外貨建て債務を前倒しで返済したり、不動産会社も「元安」によって債務が増すことを懸念して同様の動きをとっているという。

中国企業の停滞は、いまや製造業全体に及び始めている。昨年頃から中国の金融、不動産はバブル化してきたと言われていたが、いまや中国のバブル崩壊が製造業全体に及んできたということなのだろう。すでに中国の景況感を示す指数は、昨年から景気低迷のシグナルを出していた。

新チャイナリスクの懸念

1月19日付の日経新聞によると、韓国のスマホ製造で急成長した広東省のIT機器メーカーでは、受注の急減で経営が破綻、給料の支払い問題で数千人の作業員と警官が衝突したといい、河北省の多くのセメント工場でもここ1カ月工場の操業を止めていると報道されている。オーストラリアやブラジルから鉄鉱石が続々と中国に輸入され、その船団は太平洋で数珠つなぎになっていると大仰に報じられたこともあったが、いまや中国に運び込まれたそれらの商品は港に山積みとなったままだとさえ言われる。要するに、中国の過剰在庫過剰設備と過剰生産が世界中に蔓延し、世界をデフレ状況に追い込んでいると言えるわけだ。

過剰生産を世界に輸出

かつての社会主義国では、旧ソ連が陥ったように生産力をあげることが最大の目標だった。コストなど関係なく、生産高を増やす企業・省が良いとされた。腹をすかせた国民が大勢いる以上、とにかくコストなどを考えるより生産量をあげることが重要だったのだ。

しかし、市場経済のメカニズムで動くようになり、コストに見合った生産をしなければ過剰生産となり、価格は暴落することになる。かつての旧ソ連でもコストを無視して生産高競争に走ったため、結局、社会主義経済といえども回らなくなってソ連崩壊へと突き進んだのだ。

今の中国は、世界経済のメカニズムの中でモノを作り販売しているのだから、その原則を捻じ曲げ、とにかく生産に必要な物資をできる限りかき集め生産高を増やす行為に走れば、1社単位の話なら何とかもったとしても、中国全体の企業が同方向に走れば、原材料は過剰となり生産高も過剰となってコストと合わなくなる。そこへ働く労働者が賃上げを求めれば、もはや企業破綻しかなくなる──中国は今そのワナにはまってきているのだ。

中進国、中所得のワナに陥っているとも言える。これを是正するには、結局、生産調整しかなく、李克強首相は最近「腕を切り落とす覚悟でも過剰生産を解消せよ」とまず石炭、鉄鋼、セメントなどの素材産業のトップ20社以上に号令をかけたとも伝えられている。そして今や、中国の過剰生産は東南アジアなどの新興国に安値輸出となって表れてきているのである。

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