ずさんすぎる中国経済が、世界をデフレ不況に追い込んでいる

 

過剰生産の調整を!

中国は、2010年に日本を抜いてGDPで世界2位となった。コストや販売を考えなければ、生産高を増やすことはさして難しくない。中国はGDP世界2位になったことで、経済大国の仲間入りをしたが、決してコスト競争力や品質で世界2位になったわけではない。中国の予算で原材料を買い集め、それを生産に注ぎ込めばGDPで世界2位になることは、今の中国の人口、需要から考えればそう難しいことではあるまい。

しかし、コストを無視し世界の需要を考えずに生産だけを追い求めれば、世界2位になれたとしても、中国が過剰生産に陥れば東南アジアや世界の市場に影響を及ぼすことは当然なのだ。中国は新しい需要を創出するため「一帯一路」構想を掲げ、世界のインフラ投資、貿易などでそのはけ口を見出そうとしているが、世界経済の動きを見る限り、「一帯一路」構想で中国の供給を吸収できるとは今のところ見えない

むしろ、それ以前に中国の過剰生産で世界の価格が下がり、世界不況への道を走っているようにも見える。中国は今、その過剰生産の失敗に気づき、李克強首相は「腕を一本切り落とす」といった激しい表現を使って方向転換をはかり始めているが、はたして中国の構造改革はうまくいくかどうか──うまくいかないようだと中国だけでなく、アジア、世界の過剰生産につながっていこう。はたして現在の株価や資源価格の乱高下は、先行きの大不況恐慌などの前触れを示唆しているのか。

世界は、中東におけるイランとサウジアラビアの深刻な対立、イスラム国とシリアや反シリア政府軍との三つ巴の戦争、そこに参入しているロシアとトルコ、さらにそのロシアとトルコの軍事衝突、中東からEUへの100万人から数百万人といわれる流人をうかがう難民の行列、中国の景気の落ち込みと東南アジアへの影響、資源(原価)価格暴落による中南米の苦境、今ひとつはっきりしないアメリカの景気回復、北朝鮮の水爆(?)実験と中国との対立──など数えたらキリがないほど世界はあちこちで発火状態にある。

気候変動も含め大変動

それが次々と発火すると、かつての20世紀のような自由主義国対社会主義国、成長と環境の対立といった図式ではおさまりのつかない宗教、気候変動、難民、戦争などが絡んだとんでもないカタスロフィー(大崩壊)を起こす懸念もある。20世紀の危機の時代とはまったく様相の異なる大危機がやってきているような危険性が迫っている「直感」がする。アベノミクス、新三本の矢──などといった小手先の対応では乗り切れない時代に入ってきたのではなかろうか。

(TSR情報 2016年2月4日)

 

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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