トヨタとシャープの明暗を分けた、「夢の」商品作り

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その事業が大歓迎されるとかどうか簡単に見分ける方法があります。それは、その事業の前に「夢の」を付けてみること。たとえば「夢のディズニーランド」「夢のトヨペット・クラウン」のようにーー。無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』の最新号では、ビジネスの成功に不可欠な、ビジョンの中の「夢」について説いています。

ビジネスの成功とビジョン

ビジョンの権化のような経営者が多くいます。経営者ばかりでなく、歴史も人の持つビジョンが大きくその潮流をつくりあげていると言えます。

数え上げれば限がありません。大きくは、お釈迦様もそうです。

お釈迦様は、菩提樹の下で悟りを開いて解脱されました。そして、その悟りを世間の人々に語り伝えて救済するというビジョンのもとに生涯をかけて説法を続けました。お釈迦様のビジョンは生きとし生けるものの「苦からの救済」です。

時にして時代のビジョンは、大きくぶつかり合ってきました。

日本の戦国時代での織田信長と石山本願寺顕如の戦いを考えてみます。石山本願寺は浄土真宗ですが、そのビジョンのもとは親鸞上人が持ったもので「阿弥陀如来の本願」つまり悪人をも救い上げるというビジョンです。一方の信長のビジョンは、商業主義と武をもって戦国の世を統一するという「天下布武」です。

この2つのビジョンの根本精神は異なっています。天下統一のためにはぶつかることが避けれない戦いでした。どちらも時代の欲求から生まれたもので、時代の欲求に応えるビジョンが大きな力を持ち、より強く支持されるビジョンが有利に展開します。

おおきく成長するためには、時代の訴えに応えることが基本になります。それも、やっと適えられる欲求に今まさに一番の最高レベルで応えることが求められます。ここがエッセンスで、このエッセンスを悟り必死でやり通す経営者が名経営者となります。

世界最大の小売業者であるウォルマートの創業者サム・ウォルトンは、アメリカ気質の典型的な経営者です。「一番」がもっとも好きで、自分が贅沢することよりも何よりもこのゲームが大好きでした。同じような気質の経営者にGEジャック・ウェルチがいます。

サム・ウォルトンは第2次世界大戦後から事業を始めています。時代は「モノの大量生産・大量消費」とういう豊かさへの欲求が高まってきていました。そんな時代の欲求をサム・ウォルトンだけでなく多くの意欲ある経営者が嗅ぎ取り、大型量販店チェーン事業に進出しました。

そんな中には、多くの高学歴の人材を抱え大都市の中心に進出した優良企業が少なからずありました。

サム・ウォルトンのチャレンジは地方の小都市から始まっています。決して有利な創業ではありません。その中でサム・ウォルトンが生き残ったのは何故かを考えてみます。

サム・ウォルトンは完璧な「合理的なケチ」です。世界的大富豪になっても、その趣味はテニスと鶉(うずら)猟でした。同時代の、量販店チェーンで成功したほとんどの経営者が儲かったら高級車やヨットを購入して優雅にエンジョイしたのとは好対照です。

ウォルトンのビジョンは、一番になることです。他の競合者のビジョンは、大成功し豊かに贅沢することです。ウォルマートは、中規模の時から絶えず一番であったことがあります。それは、売上高に対する経費率です。つまり、お金は「お客に関わるもの」のみに投入されました。

一番になるためには、一番になることを思い、顧客のためになることのみ集中することです。

GEのジャック・ウェルチ「シェアが1位か2位」戦略はよく知られています。「シェアが1位か2位」以外の強みを活かせない事業はすべて売却するか、閉鎖するかしてなくして行きました。反対に、一番になれる企業についてはM&Aを積極的に進めて行きました。

>>次ページ なぜ倒産寸前だったホンダはバイクレースに挑んだのか

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