辻褄が合う。加計問題で「京産大」が締め出された不可解な理由

 

疑惑の核心は、官邸、内閣府の後押しによって早くから準備を進めていた加計学園だけが間に合うよう、平成30年4月開学という時期を設定し、四国にしか獣医学部を新設できないような条件を加えて、京産大を閉め出したのではないかということだ。

京都府と京産大が昨年3月に獣医学部新設を提案し、国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングを受けたのは同じ年の10月17日のことだった。

八田達夫座長はその席上、「非常に説得的な話だ」と、京産大のプランを評価した。

ところが、前川喜平・文科省前事務次官の証言によると、この年の10月中旬に和泉総理補佐官から呼び出しがあり、加計学園の獣医学部新設の手続きを早く進めるよう要請されたという。

和泉総理補佐官はそれ以前の同年9月上旬にも前川前次官を執務室に呼び「総理は自分の口からは言えないから私が代わって言うのだ」と、強い働きかけをしている。

つまり、京産大へのヒアリングが行われていたころには、すでに官邸における結論は出ていたということだ。

レールはその前年、2015年に敷かれた。

この年、愛媛県と今治市は国家戦略特区による獣医学部新設を内閣府に提案した。ワーキンググループのヒアリングを受けたのは同年6月5日と、12月10日の2回である。

6月5日の最初のヒアリング時点では、八田座長のシビアな発言が目立っていた。

今治ということの理由づけは何なのでしょうか。感染症対策の専門家が欲しいのであれば…待遇を改善するなり、全国どこの大学だろうと使える獣医奨学金というものをつくって、将来愛媛県庁に来たらチャラにしてあげますという仕組みをつくったほうがよほど簡単な気がするのです。

議事録を読む限り、ワーキンググループに政治的判断は働いていなかったようだ。むしろ、獣医学部を多大なコストをかけて新設しないでもコト足りるという空気すら感じられる。

しかし水面下で、官邸は加計学園の計画を進める動きをしていた。今治市の記録文書によると、2015年4月1日、同市の特区担当者は政府からの連絡を受け、その翌日、急きょ総理官邸に出向いている

4月2日といえば、今治市が提案する2か月前のこと。この段階で、今治市の担当者が官邸に招き入れられることはふつうありえない。獣医学部開学を前提とした暗黙の合意のようなものが首相周辺と今治市の間に形成されたとみるのが自然ではないだろうか。

今治市の動きに関し、日本獣医師会は新設反対を特区担当の石破茂・地方創生大臣(当時)に強く訴えた。

安倍首相肝入りの案件とはいえ、石破大臣のころは官邸もゴリ押しはできない。一定のハードルを設けないわけにはいかず、2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略改定2015」で、「新設のための4条件」(石破4条件)が示された。

現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し▽ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり、かつ、▽既存の大学・学部では対応困難な場合には、▽近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

愛媛県と今治市はこの条件に沿った案文を作成し同年12月10日、ワーキンググループのヒアリングで、次のように追加提案した。

日本再興戦略に基づき、人獣共通感染症、食品安全対策の研究のみならず、行政の現場でも活躍できる、従来と異なる国際的な獣医師の養成を目指す獣医学部の新設を考えております。

実際には、再提案を待つまでもなく、内閣府と国家戦略特区の諮問会議、ワーキンググループの間ですでに、今治市を特区に指定し、加計学園の獣医学部を新設する方向で意思統一がはかられていた。

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