「化学兵器」を使ったのは誰だ??
さて、アメリカの欺瞞は、これで終わりません。
欧米の願いに反して、アサド政権はなかなか崩壊しませんでした。業を煮やしたオバマは2013年8月、「シリアを攻撃する!」と宣言します。
理由はなんでしたか?
皆さん覚えておられることでしょう。そう、「アサド軍が、『化学兵器』を使ったから」です。
これ、「世界の常識」と思われていますが。以下の記事、「目を皿のようにして」熟読してください。
シリア反体制派がサリン使用か、国連調査官 AFP=時事5月5日(月)配信
[AFP=時事]シリア問題に関する国連(UN)調査委員会のカーラ・デルポンテ調査官は5日夜、シリアの反体制派が致死性の神経ガス「サリン」を使った可能性があると述べた。
スイスのラジオ番組のインタビューでデルポンテ氏は、「われわれが収集した証言によると、反体制派が化学兵器を、サリンガスを使用した」とし、「新たな目撃証言を通じて調査をさらに掘り下げ、検証し、確証をえる必要があるが、これまでに確立されたところによれば、サリンガスを使っているのは反体制派だ」と述べた。
どうですか、これ?
化学兵器=サリンガスを使っているのは、「反体制派だ!」とはっきり書いてあります。
皆さん今まで、
「悪のアサド」
「善の反アサド」
と思っていませんでしたか?
もちろん独裁者アサドが「善だ」とはいいません。しかし、「反アサド」が「善だ」とも、とてもいえない状況なのです。
プーチンの目的
さて、オバマが「シリア攻撃」を断念したのは2013年9月です。
アサドは、プーチンの指示に従い、「化学兵器破棄」に合意した(アサドが化学兵器を使ったかどうかは不明だが、化学兵器を保有していたことは事実である)。
その後「元反アサド派」だった「イスラム国」は独自の勢力と化した。イラクとシリアで急速に勢力を拡大しています。日本人を含む多くの人々を「公開処刑」し、動画をユーチューブにアップする。確かに深刻な脅威になっています。
で、アメリカと同盟国は、2014年8月から「イスラム国空爆」を開始した。1年ちょっとで、空爆を3,000回も実施したといいます。
ところが、それでイスラム国は弱体化するどころか、ますます勢力を拡大している。そして、欧米が支援する「反アサド派」同様、アサド政権にとって、「深刻な脅威」になってきた。
こういう状況を、ロシアはどう見ているか?
「イスラム国」はアメリカの敵ではある。しかし、アメリカは、「反米親ロ」のアサド政権を打倒するために、「イスラム国を利用しているのではないか??」
こう見ている。
だから、シリア空爆の第1の目的は、当然、
・反米親ロシアのアサドを守ることである
空爆のターゲットになるのは、アサド政権を脅かす
・イスラム国
・欧米が支援する「反アサド派」
である。
今、アメリカは、「プーチンはウソをついて、イスラム国ではなく『反アサド派』を空爆している」と批判しています。
こういう批判が出ることはわかっていた。それで、ロシアはこんなことを主張しています。
今回の空爆について、ロシア側は「シリア側の要請を受けており、合法的」と訴えている。
「米、オーストラリア、フランスによるシリア空爆は、アサド政権や国連安保理の承認を得ておらず国際法違反」(プーチン氏)との主張を強調し、ロシアの軍事行動の正当性を訴える狙いがある。
(毎日新聞10月1日)