ところが、バングラデシュの事件が起きても、安倍首相は参院選の街頭演説などで「国際社会と力を合わせてテロを根絶する。内外の日本人の安全をしっかりと守っていく」と言うばかりだ。
いかにも虚しい言葉というほかない。今回の事件はレストランで起きた。ソフトターゲットといわれる日常の場がテロの標的とされているのに、どうやって守るというのか。警備体制が比較的厳重であるはずのイスタンブールの大空港でさえ防ぎようがなかったではないか。
「テロには屈しない」という安倍首相の発言は勇ましいが、その犠牲になってはたまらない。
カイロでの安倍スピーチを欧米メディアは「nonmilitary assistance to foes of the Islamic State(ISの敵への非軍事支援)」と報じた。結果として、日本は「IS」に敵対しているという姿勢を世界に宣伝してしまったのだ。
安倍首相は自分自身が日本の最大のリスクであることに気づいていない。今、われわれ国民がはっきり認識しておかねばならないのは、参議院選の争点から逸らそうとしている彼の大本命の政策、憲法改正こそが、国民一人一人にとって危険きわまりないものであるということだ。
安倍首相が「占領軍に押しつけられた嘆かわしい憲法」と主張する現行憲法と、自民党が2012年に作成した憲法改正草案は、まったく性格の異なるものだ。
自民党草案では、現行憲法第二章(9条)にこめられた平和主義の理念は崩されている。
自衛隊は、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍となり、「武力の行使は永久に放棄する」から「武力の行使は用いない」へと変わり、さらに「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と但し書きが加わって、自衛権の名のもとに戦争ができるようになっている。
第一章の「天皇」については、「日本国の象徴」から「日本国の元首」に変更。
「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」という条文を加えている。
また第三章「国民の権利及び義務」では、自由、権利は保持されなければならないが、「公益及び公の秩序に反してはならない」とし、為政者のモノサシで自由、権利を制限できるような仕組みにしている。
このように、自民党の憲法改正草案は、自衛権という名目で戦争することを可能にし、個人より国家を第一に考えるよう国民をコントロールする意図を有することがわかる。