二言目には「今時の若いモンは昔と違ってなっとらん」とぼやく方、よく目にしますよね。でも、それって本当なのでしょうか? 今回の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』では教育評論家の親野智可等(おやの ちから)先生が、15歳で元服していた時代と今の「社会」の違い、人類の寿命が延びたメリットなどを挙げながら、昔に比べて幼いと非難される若者たちの「長所」について考察しています。
今の子どもや若者に手がかかるのは困ったことなのか?
ある知人がこう言いました。
「自分たちが大学受験をした頃、試験会場に親が付きそうなどということはあり得なかった。大学の入学式に親が出席するなどということもあり得なかった。ところが、今はごく普通にこういったことが行われている。それどころか、入社式に親を招く会社もけっこうあるようだ」。
保育園、幼稚園、小学校、中学校の先生たちは口を揃えて言います。
「以前と比べて手がかかる子が増えた。子どもたちが年々幼くなっているように感じる」。
高校の先生たちは「今の高校生は昔の中学生と同じ」と言い、大学の先生たちは「大学生のレベルが昔の高校生並みになってきた」と言います。
企業の年長者たちも言います。
「近ごろの新入社員はまるで子どもで使いものにならない。30才くらいになってようやく使えるようになる」。
とにかく今の子どもや若者は全体的に幼くて手がかかる。未成熟で自立していない。昔はもっとしっかりしていて、15歳くらいで元服して大人だった。それに比べて今の子どもや若者には困ったものだ。
こういう話をよく耳にします。
でも、私はこういった考え方に賛成できません。私はこれは一概に悪いこととは言えないと思います。なぜなら、生物が高等になればなるほど成熟するまでに手がかかり時間もかかるからです。
例えば、昆虫は卵を産みっぱなしにするだけで子育てなどしません。これが魚類になると昆虫に比べて子育てに手がかかります。もちろん魚類といってもいろいろですが、中には孵化した稚魚を親が自分の口の中でしばらく守り育てる魚もあります。これは昆虫ではあり得ないことです。
鳥類になるとさらに手がかかります。卵を温めて孵化させ、ヒナにエサを運びます。飛び方やエサの取り方を教えるものもあります。魚類では、子どもに泳ぎ方を教えたりエサの取り方を教えたりすることはありません。
哺乳類になると、かなりの手間と時間をかけて狩りの仕方を教えたり、仲間集団におけるコミュニケーションの取り方や守るべきルールを教えたりします。中でも飛び抜けて手間と時間がかかるのが人間の子育てです。
このようなことから、生物が高等になればなるほど成熟するまでに手がかかり時間もかかるといえるのです。ということは、今の子どもや若者が手がかかるようになったということは、人類がよりいっそう高等生物になりつつあるということなのかも知れません。