また、有名なエピソードで、チャップリンの目の前でチャップリンの真似をしたこともあります。
チャップリンが、おそらく新婚旅行だったと思いますが、船で世界中を回っている時に、日本に立ち寄ったことがあります。どうしてもチャップリンに会いたかった淀川さんは押しかけます。
チャップリンは人に会うのが嫌いだったので、まあ半ば仕事としてでしょう、「3分だけ会ってやる」と言うのです。最初は淀川さんも「あなたの映画はこれを見た、あれを見た」と話すのですが、まあ、そういうのは聞き飽きているのでしょう、チャップリンも「あ、そ」みたいなつれない態度。
本気であなたの映画が好きなんだ、真剣に見たんだよ、ということを示そうと、淀川さんは映画の冒頭のシーンをその場で事細かに真似したのです。それをじっと見ていたチャップリンも、さすがにこれは本物、本気で僕の映画が好きなんだと気づき、「ちょっとこっちおいでよ」と船室に招き入れてくれて、たっぷり語り合ったそうです。
淀川さんの映画への情熱と、常人離れした映像記憶の能力がもたらした出会いと言えるでしょう。
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