現役医師が警告。米国で深刻化する「医療用麻薬」乱用の深い闇

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日本においてはがんの緩和ケアなど、限定された場面でしか使用が認められていない「オピオイド系鎮痛剤」(医療用麻薬)。しかし、アメリカ、カナダなどいくつかの国では慢性の腰痛や関節痛でも処方されるため薬物中毒者が急増し多くの死者を出しているようです。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、現役医師の徳田先生が、この現状に警鐘を鳴らしています。

オピオイド大国アメリカ

アメリカ国内での薬物中毒は既に深刻な事態です。アメリカの薬物中毒による死亡者数はHIV感染症での死亡者がピークとなった年のHIV感染症の死亡者数をすでに超えています。アメリカにおける過去15年間で薬物中毒による死亡者はなんと53万人にも及んでいるのです。

アメリカで薬物中毒の蔓延のきっかけとなったのはオピオイド薬の処方数の増加であり、この15年間で4倍に増えています。薬物中毒による死亡に関連したオピオイド処方薬で主なものは、オキシコドン、ハイドロコドン、そしてメサドンです。

もちろん、従来の違法薬物で代表格であるヘロインも、薬物中毒による死亡の主要な原因薬物の1つではあります。ヘロインに加えて、違法に製造されたフェンタニルも加わりました。しかしながら、このへロインやフェンタニルのマーケットが進出してきたのは、もともとオキシコンチンの依存症が蔓延していた地域。アメリカ闇社会のディーラーたちは、オキシコンチン大量消費地域をターゲットとしたのです。

先進国の中でオピオイド処方量を比較すると、アメリカは突出してダントツ1位の国であることがわかります。2位のカナダや3位ドイツの倍程度のオピオイドをアメリカの医師たちは処方しています。慢性の腰痛症や関節症でオピオイドが処方され始めたのが、アメリカでのオピオイド依存症蔓延の大きな要因です。

日本でも、がんの緩和ケアではオピオイドは必須です。また激しい急性疼痛でも、短期間に限って使用される事はあります。しかしながら、がん以外の原因による慢性疼痛で使用されることはほとんどありません

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