米中首脳会談、ローマ法王訪米とかぶって全米報道はほぼスルー

 

アメリカのオバマ政権の言っている「中国開かれた社会変革を進めるべき」という主張、一方で習近平主席の言っている「米中2大国お互いの価値観を認めて大国間関係を確立すべき」という主張は、お互いにどう考えても受け入れるわけにはいかないわけで、そんな対立関係の中で、今回の会談については、「良くまとめた」と言えます。

会談後の両首脳の表情は渋かったものの、硬いままのオバマに対して、習近平主席はやや緩んだ表情をしていたのが印象的でした。

一種の「秘密取り引き」のような会談ですが、仮に首脳間で当座の「手打ち」がされたにしても、よく考えれば大変重要なニュースです。ITや航空産業などで、改めて米中の経済の結びつきが確認された一方で、南シナ海やサイバー攻撃問題についても取り上げられたとすれば、これはアメリカの世論としては関心が高いはずです。

ですが、TVやケーブルTVのニュースで扱うにしては、サイバー攻撃の問題も、中国経済のスローダウン懸念の問題にしても「複雑過ぎる」わけです。また「南シナ海」や「汚職摘発」の問題については、アメリカの一般世論にはよく知られていないので、首脳会談の内容を解説するためとはいえ、詳細をメディアが流してしまっては、アメリカの世論の中に「嫌中感情」を作ってしまうかもしれません。ですから、各メディアとしても「法王人気」にかこつけて、米中首脳会談については詳細な報道を「スルー」したということは考えられると思います。

image by: Drop of Light / Shutterstock.com

 

『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋

著者/冷泉彰彦
東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。
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