現状は?
現状はどうなのでしょうか? うまくいっているとは、とても言えない状況です。
まず「北の対中戦略」はどうでしょうか? 確かにトランプは、親ロシアです。しかし、アメリカで「ロシア・ゲート」が盛り上がり、トランプはプーチン・ロシアと和解できない状況になっている。米ロ関係は現状、「オバマ時代よりさらに悪い」と言われています。それで、ロシアは、ますます中国に接近している。実際、中ロは現在、「事実上の同盟関係」にあります。
私は10年前、『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』という本を出しました。今頃になって、中ロ関係について、「よくわかりましたね!」などと褒められます。褒められても、心境は複雑。私の予測が当たっているということは、「北の対中戦略がうまくいっていない」ことを示しているのですから。
では、「南の対中戦略」はどうなのでしょうか? こちらは、「北の対中戦略」と比べればずいぶんマシです。なんといってもインドは、日本、アメリカと同じ民主主義国家である。インドと中国には領土問題があり、インドはかなり中国を警戒している。
そうはいっても、まったく油断できません。インドは2015年、中国・ロシアが主導する反米の砦「上海協力機構」の正式加盟国になっています。日印関係、米印関係は、良好。しかし、ロ印関係もいい。そして、賢明なインドは、中国ともケンカにならないよう、かなり気を使っているのです。
「南の対中戦略」を成就させるためには、日米の長期にわたる一貫した取り組みが必要になります。そして、「戦略」といっても中国に対して攻撃的であったり、挑発したりするべきではありません。
日本は、インドやロシアと経済交流、軍事交流を深め、関係を強化していく。そうすれば、自然と中国は侵略に動けなくなっていきます。
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