夏休み明けに「いじめ自殺」させないため、盆休みに親がすべき事

 

A君がなぜいじめられていることを話したのか

A君の父親は、A君がいじめられているのではないかと、ずっと疑問を持っていたが、A君が否定をしていたので、その言葉をなるべく信じようと心がけていた。私への相談はこの父親からであった。

いじめられているかどうかわからない中で無償の調査をしてくれという要請には、一切私は応えない方針だ。なぜなら無償対応であり、それは親力、親子関係で行うべきだと考えるからだ。もしも、それでもやってくれというならば、断るか有償調査での依頼かの2つの選択肢しか用意できない。

だから、私は、A君の父親に次のようなアドバイスをした。これは多くの教員や保護者が、不意に子どもからいじめ行為の告白やいじめ被害の話を聞く事が出来た際に同様の体験をしているので、それを私は話したのだ。

ルールは3つだ。

1つ目は、警察の取り調べではあるまいし、そもそも認めさせる強制力はないと考える事

2つ目は、論理的に理詰めで追い詰めて行こうと考えても、否定には根拠はいらない、意思のみで事実とは異なっても否定されてしまえば、それで話は終わってしまうという事

3つ目は、無駄話や自分の失敗談などが意外な呼び水になる事が多いという事

ある小学校の校長は、校内で起きるいじめ行為に頭を悩ませていた。校長自身、児童一人ひとりの名前も顔も知っており、いろいろな子の相談も時間が許す限り校長室を開放して受けていた

あるとき、学級担任からいじめ行為をしているかもしれないという児童と校長室で、校長が子どもであったときの遊びの話をしているとき、この児童は、唐突に、友達が羨ましくて、その子の靴を他の下駄箱に隠してしまったと告白を受けた。脈絡も質問もしていなかった中で突然の告白に驚いたようだが、その後、校長が間に入って、見事に和解に漕ぎ着けた。

私はこの校長がこれまで築いてきた児童との信頼関係が土壌にあり、心の重荷になるいじめ行為を話したのだと考えた。ロジカルな世界で生きている大人には理解できないかもしれないが、心を開くというのは、システムやテクニックではなく、現場にいると、もっと泥臭いものなのだ。

A君の父親は、一緒にテレビを観ているときに、そのテレビの内容に合わせて、自分が子どもであったときの失敗談を何と無く話をした。すると、A君はしばらくしてから、「部活を辞めたいのは、孤立させられたり、集合場所や時間をわざと間違えて教えられたり、嫌がらせが酷いんだ」と話した。

後に、私がA君になぜその時に、いじめの被害を話したのかと質問すると、彼はしばらく考えて、「対価交換かな」と答えた。つまりは、父親も恥ずかしい話をしてくれたから、以前から質問されていた部活を辞めたい理由を話したというわけだ。

私はこの回をどうしてもお盆前に「伝説の探偵」で報せたかった。世の中には、机上の空論とどのような条件下で取られたデータかわからぬ統計を用いて、いじめの専門家だという者もいる。そうした者は、確かに論理的だし、話もわかりやすいが、現場を知らない。実際にいじめられている者の話を直接聞いたことはほとんどないのだ。だから、使えないもしくは使われた事がない何かのテクニックなどの情報が世の中には溢れている

例えば、ある教育委員会では多額の予算をかけて、いじめ予防の動画を作っているが、運転免許の更新時に見せられる事故の映像と効果的には大差がない。そもそもこうしたものが響く層は、予防教育がなくてもいじめに加担はしづらいが、いじめの加害常習者には何の感情も警鐘もない

共働きやお金や時間に追われる親世代も多い事だろう。簡単な方法やシステム的な方法が目につけば飛びついてしまうかもしれない。

だから、お盆などで休みがあり家族の時間が比較的多く取れるであろうこの時期、そして、実際、近年は夏休み明けは9月1日と決まっているわけではなく、地域によって20日ごろから夏休みは開けてしまうので、その前に子供と心と心で向き合ってほしいと伝えたかったのだ。

いじめによって、これ以上犠牲者を増やしてはならない。子供達が夏休みの今こそ、親にはできる限りなどと勝手に自分に上限を作らずに、子どもを1人の人間としてみてしっかり向き合ってほしいと思う。

print
いま読まれてます

  • 夏休み明けに「いじめ自殺」させないため、盆休みに親がすべき事
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け