北朝鮮にパイプはあるか
はたして金正恩・党委員長はトランプ会談をどう受け止め、どういう姿勢で臨むのだろうか。一部には早くも“具体的な内容は何も詰まっていないし、日程もはっきりしていない。初の米朝首脳会談が行われた”というパフォーマンスだけで、結局は尻切れトンボになるだろうという観測が強まっている。
しかし金正恩・党委員長も米朝首脳会談の話合いの中身を全部蹴っ飛ばしトランプ大統領に恥をかかせては後が恐いと思っているはずだ。また、南北朝鮮の戦争状態を終わらせることで、アメリカから経済支援を受けたい思惑もあるはずだ。今後は南北朝鮮の首脳会談や外相、事務レベルなどで具体的な日程と両国の取引内容を詰めてゆくとみるのが妥当なのではないか。
米国と総花外交からアジアへシフトを
そんな米朝の接触が始まった時、安倍首相は外交をどうするつもりなのか。最近、北朝鮮と話し合いたいとも言い、打診しているようだがトランプ大統領が次に何か事を仕掛ける前に日本も北朝鮮外交に何らかの手を打っておくべきだろう。安倍外交は華やかだが、近隣の北朝鮮、韓国、中国、あえていえば東南アジア諸国との密なパイプ、話合いの準備が出来ているとは言い難い。
そろそろ安倍外交は、総花的な世界外交だけでなく近隣の国々との話合いの密なパイプづくりにもっと力を入れておく時ではなかろうか。近隣の国々とは首脳外交だけでなく、閣僚クラスや経済界、外にはあまり知られていないがいざという時に物をいうパイプ役を同時に築いておくべきだろう。
かつての日中外交が難しかった時期には、政治だけでなく経済界、知識階級、芸術界、スポーツ界などの分野でもいくつかの大きな太いパイプがあり、それらが日中国交回復の時にどれだけ大きな役割を果たしたかを思い起こしてみることも大事だろう。いま中国、北朝鮮、韓国、台湾、東南アジア諸国などと公式以外のパイプ役を担える人々が在野にどの位いるか、などについても調べておいたほうがよいのではなかろうか。
間もなく行われる自民党の首相候補者選挙でも内政や抽象的な外交政策だけでなく、どれだけ海外に個人的パイプを持っているかについてもぜひ討論して欲しいものだ。
(TSR情報 2018年8月23日)
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