「伝説のアナリスト」と称され、ベストセラー『新・観光立国論』などの著書で知られるデービッド・アトキンソン氏(小西美術工藝社社長)はこう指摘する。
日本の場合、まずは生産性の悪いシステム改善を目指して、男女の賃金ギャップを埋めることやワークシェアリングを進めることで、十分経済成長が可能です。これらのことをせずに移民を迎え入れようとしているのは、構造分析がまったくできていないからでしょう。今の日本が移民を受け入れたところで、上手くいくはずがないのです。…今議論されているのは、低スキルの人を迎え入れて日本で一定期間働いてもらい、極論を言えば、日本人の年金と医療費を稼いでもらうといった都合のいい話です。
(ハーバー・ビジネス・オンラインより)
人口減少に見合うよう、統合などによって企業の数を減らし、経済合理性のある経営を進めて労働生産性を上げれば、経済成長はでき、日本人労働者の賃金も上昇するという主張だ。企業の数を維持するために、低スキルの外国人労働者を増やしても労働生産性は低いままで、日本人労働者の賃金は逆に下がる可能性すらあるということだろう。
経済界の望む外国人受け入れ推進は、長期的な展望のうえに考えられたものとは思えない。目の前の不足を埋めることが目的だとすれば、外国人労働者は“使い捨て”の存在になりかねない。
拙速な法改正によって、受け入れ体制が整わないまま外国人労働者が一気に増えたら、少なからず社会の混乱が起きることは避けられないだろう。日本の将来像まで展望するのなら、あらゆる観点から議論し尽くすべきである。
ただし、いまや日本は海外の働き手にとって必ずしも魅力のある国ではなくなっているようではあるが…。
image by: 首相官邸