『ルパン三世』が教えてくれた、今の日本が忘れてしまったもの

 

今回、モンキー・パンチ先生が逝かれたことで、自宅のブルーレイコレクションから『ルパン三世 カリオストロの城』を引っ張り出して、鑑賞しました。過去何度見たわからないほどですが、今回も改めて「こんな完璧な作品あるのか」と唸りました。僕にとってのスタジオジブリ作品では生涯の1位です。いや、邦画部門でも1位かもしれない。

多くの方がすでに観られている作品だと思うので、ストーリーは割愛しますが、注目すべきはやはり、そのラストシーン。カリオストロ王国の公女、クラリスは、「おじさま、連れて行って」とルパンの胸に顔を埋めます。泥棒稼業も今はできないけれど、そのうち覚えてみせるから、と。

そのクラリスを抱きしめようとして、葛藤しつつも、そっと肩を抱き「ダメだよ、(長い間、幽閉されていて)やっと明るいところに出てこられたんだ。泥棒なんて汚れちゃ」と、ニッコリ笑います。この葛藤している数秒も完璧な間です。でも、困った時は、おじさん、地球のどこにいても、すっ飛んでくるからなーと、去っていく。

追いかけてきた銭形の「ルパーン! とんでもないものを盗んで行きやがった」というセリフに「あの人は何も盗んでいません」とクラリス。「いえ、あなたの心です」。ここで音楽が挿入。クラリスが嬉しそうに「ハイ!」と答え、「逃がさんぞー」と日常のライフワークに戻る銭形の背中。「なんと気持ちのいい連中だろう」とクラリスお付きのおじいさん。こっちに笑顔で手を振る日本の警察連中。

次元の運転する車内で、遠い目をするルパン。「おまえ、残ってもいいんだぜ」と次元。その時、偽札の原版を持った不二子がバイクで並走。「あら、ふ~じこちゃぁん、仲良くしたいわ」といつものルパンに戻る。でも、よくよく考えたら、映画の冒頭で、国営カジノから盗んだ現金が、偽札と判明し、すべてを車から捨てるシーンがあります。つまり、不二子が原版を持っているとはいえ、ルパンがそれを本当に欲しいとは思えない。いつもの女好きの泥棒に戻ることで、クラリスへの想いを断ち切っている。感動話では終わらせない(未見の方は是非!)。

おそらく、僕たちの親の世代が「カサブランカ」など多くの60年代ハリウッド映画で、観てきたハードボイルドな空気が踏襲されている。男の生き様の教科書になっている。寄り添うことだけが愛じゃないと教えてくれている。やっぱり、こんなカッコいいラストシーンを僕は知らない。

あ。ここまで書いて。『カリオストロの城』ってモンキー・パンチっていうより、宮崎駿だった!

image by: (C)kyu3

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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