児童等の声は無視
さらに12月改正案では、
この法律の運用に当たっては、いじめを受けた児童等に寄り添った対策が講ぜられるように留意するとともに、いじめ防止等について児童等の意見が反映され、その主体的かつ積極的な参加が確保されるように留意しなければならない。
とあり、児童等(小学生を指す児童だけではなく、生徒にあたる中学生高校生を含む)の主体的な取り組みを推奨したが、馳座長試案では、これは削除された。児童等の主体的ないじめ防止への取り組みは、現場では実績と効果が高く確認されており、特に足立区立辰沼小学校における取り組みは高い実績がある。
また、教育委員会が大好きな子供らを使った啓発運動や作文コンクール、標語の類についても、取り組み方によってはいじめ予防のみならず未発見であったいじめの発覚に繋がるものだが、これも児童等の取り組みや意見と考えれば、馳座長試案では(削除したということは)無視するとしたことになる。
第三者委員会は利害関係者が委員になってもOK
私が最も驚いたのは、馳座長試案における「第三者委員会」の条項である。この場合、第三者委員会は、生命、身体、財産などの危害を意味するいわゆる重大事態が発生した時に発足して、いじめの経緯などを調査したり分析したりする委員会のことになる。
特に「第三者委員会」は、その言葉のイメージから世間一般では、中立で公平な組織でやることが大前提と思われているが、いじめ問題で出てくる第三者委員会は、利害関係者で固められていたり、バイアスのかかった組織構成であるものは珍しくない。
馳座長試案
当該調査を実施する者は、専門的見地に基づいた中立、公平かつ公正な調査が行われるよう、調査を行う組織の委員に利害関係がない者を2名以上含まなければならないこととすることその他の必要な措置を講ずるものとする。
とされている。多くの第三者委員会は、5名程度で構成されることが多いため、つまりは3名は利害関係者で良いことになり、最も権能を有する委員長も利害関係者で良いことになってしまう。これは絶対に許されてはならない改悪である。
12月改正案では、
調査を行う組織の委員及び事務局の長は、利害関係の無い者でなければならない。ただし、事務局の長については、特別の事情がある場合においていじめを受けた児童等及びその保護者の同意があるときは、この限りではない。
とある。どこで、「2名以上の利害関係の無い委員」という言葉が出てきていたのか疑問も生じ得るが、少なからず、超党派の国会議員が専門家などを呼んで意見を聞いたり、遺族から話を聞いたりして話し合って決めていった「12月改正案」は大半が無視され、馳座長の暴走で試案が公表されたことになろう。
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