ハラスメント経験「ある」が8割。法整備すすむも未だ機能せず

2019.07.17
by ニシム(MAG2 NEWS編集部)
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今年5月、職場でのパワーハラスメント防止を会社に義務付けるパワハラ防止法が成立し、6月には国際労働機関(ILO)の総会で、仕事上の暴力やハラスメントを禁止する条約が採択されまたことをご存知でしょうか。今や世界レベルで、職場のハラスメントは許されざる行為として排除される方向で法整備が進んでいます。にもかかわらず、身近な就業環境でハラスメントを受けたり目撃したりしている人は、実は未だに少なくないのではないでしょうか。総合転職エージェントのワークポートが6月に実施したパワハラに関するアンケート調査からは、依然として劣悪な職場環境でハラスメントに苦しむ人々のリアルな姿が見えてきましたた。

ハラスメントを受けた経験がある人が約80%

日本国内だけでなく、世界規模でハラスメントが問題視されている中で、いったいどのくらいハラスメントが私たちの生活に蔓延しているのでしょうか。470人の対象者に、これまで何らかのハラスメントを受けたことがあるか聞いたところ76.4%の人が「はい」と回答し、「いいえ」と回答したのは23.6%でした。実に80%近い人たち…ほとんどの社会人が、これまでにハラスメントを受けた経験があるという現実がわかりました。

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いまだにパワハラ経験をしている人がこんなにも多いとは、正直驚きです。まだまだ意識改革が進んでいないようです。

ハラスメント被害者の90%がパワーハラスメントに苦しむ

ハラスメントを受けたことがあると答えた359人を対象に、どのようなハラスメントを受けたことがあるか聞いたところ(複数回答可)、「パワーハラスメント」が92.5%で最多となりました。次に「モラルハラスメント」(43.7%)、「セクシャルハラスメント」(23.7%)と続きました。厚生労働省は6月、2018年度に全国の労働局などへ寄せられた労働相談のうち、パワーハラスメントなどの「いじめ、嫌がらせ」に関するものが7年連続過去最多だったと発表しています。本調査でも、ハラスメントにあったことがある人の多くがパワーハラスメントに苦しんでいたことがわかりました。

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飲み会が少なくなってきているため、アルハラ・セクハラは、受けやすいシチュエーション自体が減っているのかもしれません。

ハラスメントによって退職をえらんだ人が42.9%。現在進行形の人も多い

ハラスメントを受けたことがあると答えた359人に、どのように解決したのか聞いたところ(複数回答可)、最も多かったのは「退職した」で42.9%でした。次に「我慢して自然消滅した」と「今も解決していない」が28.1%と並びました。この結果から、ハラスメントの多くが根本的な解決に至らず、泣き寝入りしたか、現在進行形で苦しんでいることがわかりました。
また、公的機関や弁護士といった専門知識をもつ人に相談したという人は、いずれも5%以下となりました。

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今も苦しんでいるという回答をされた人が3割近くもいるとは、本当に心が痛みます。一方で、退職を決意する人が4割以上も。実に残念なことです。

ハラスメントの相談を受けたことのある人が50%以上

対象者全員に、ハラスメントについての相談を受けたことがあるか聞いたところ、半数以上の51.7%がはい」と回答し、48.3%が「いいえ」と回答しました。先ほどの質問の答えにもあったように、ハラスメントの被害について公的機関や弁護士に相談する人は少なく、多くの人が職場の人や家族、友人といった身近な人に相談する傾向にあるようです。

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自身の職場でハラスメントを目撃した人が70%以上

現在の会社(直近に勤めていた会社)でハラスメントの現場を目撃したことがあるか質問したところ、72.1%の人がはいと回答しました。職場でハラスメントを目撃したことがないという人は27.9%でした。
本調査の結果から、80%近くの人がハラスメントを受けたことがあるほか、多くの人がハラスメントに関する相談を受けたり、ハラスメントが蔓延している会社で働いたりしていて、ハラスメントが日常的に起こっているようすがうかがえました。ハラスメントに対する社会的関心度は高まっていますが、根絶に向けた環境の改善や制度の整備はいまだ十分ではないようです。

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求められる対策は専門の相談窓口と明確な処罰

対象者全員に、現在の会社(直近の会社)は何らかのハラスメント対策を行っているか質問したところ、「はいと答えた人は32.1%で、「いいえ」と答えた人が45.3%、「わからない」と答えた人が22.6%となりました。
「はい」と答えた人に対策の具体的な内容を聞いたところ、「防止ガイドラインの作成、相談窓口の設置」(30代・男性・システムエンジニア)、「対策チームが存在し、調査などを行って改善できない場合はハラスメントを行った人に退職勧告」(20代・男性・クリエイター)といった、相談窓口の設置と明確な処罰の周知といった内容がほとんどでした。中には「電話相談窓口などを設けているが実際は稼動していない可能性がある」(20代・男性・接客販売)といった、対策は講じたが十分に機能していないといった意見もみられました。
また、「わからない」「いいえ」と答えた人に、会社にどういった対策をしてほしいか聞いたところ、「きちんと相談できる産業医、カウンセラーをおいてほしい」(30代・女性・クリエイター)、「公的機関の定期的な訪問診療」(40代・男性・管理)といった、専門知識をもつ外部の相談窓口設置を求める声が多く挙がりました。ほかにも、「罰則制度の設定および就業規則の制定」(40代・男性・企画マーケティング)、「加害者の退職もしくは部署異動など、速やかに対処してほしい」(30代・女性・事務)といった、明確な処罰や対処の設定を求める声も目立ちました。

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「逃げ場のない状況」への悲鳴も。社内では解決できない事例も

今回、本調査に挙げられた意見の中には「ハラスメントが社長によるものだからどうしようもない」(20 代・男性・営業)、「人事部がハラスメントをしていたので相談場所がなかった」(40 代・女性・クリエイター)という、本来ハラスメントの防止に努めるべき人たちがハラスメントの加害者になっているというケースも散見されました。

今回得られた結果から、すでにハラスメントは社内だけでは解決できない状態にまで蔓延している場合も多いと考えられます。社員が安心して働ける環境で能力を十分に発揮するためにも、企業は今後、専門知識をもつ第三者機関と積極的に連携することを求められるのではないでしょうか。

source: : ワークポート調べ https://www.workport.co.jp/

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