香港デモを焚きつける米国が引き起こしたい「第2次天安門事件」

 

アメリカは、外国の革命勢力を支援する

これ、どうなんでしょうか?考えられる可能性は二つです。一つは、中国政府が香港デモ弾圧の口実に使いたい。「デモ参加者は、アメリカの手先だから厳しく弾圧せよ!と。もう一つは、実際にアメリカが香港デモを支援している。つまり中国政府は事実を述べている

現時点で、「どっちがホント」か断言することはできません。しかし、皆さんに知っておいて欲しいのは、「そういうことがある」ということです。たとえば03年ジョージア旧グルジアで革命が起こりました。この時、失脚したシェワルナゼさんはなんといっていたか?03年12月1日の時事通信。

グルジア政変の陰にソロス氏?=シェワルナゼ前大統領が主張

 

【モスクワ1日時事】グルジアのシェワルナゼ前大統領は、11月30日放映のロシア公共テレビの討論番組に参加し、グルジアの政変が米国の著名な投資家、ジョージ・ソロス氏によって仕組まれたと名指しで非難した。ソロス氏は、旧ソ連諸国各地に民主化支援の財団を設置、シェワルナゼ前政権に対しても批判を繰り返していた。

03年11月29日付朝日新聞。

「混乱の背景に外国情報機関」シェワルナゼ前大統領と会見

 

野党勢力の大規模デモで辞任に追い込まれたグルジアのシェワルナゼ前大統領は28日、首都トビリシ市内の私邸で朝日新聞記者らと会見した。大統領は混乱の背景に外国の情報機関がからんでいたとの見方を示し、グルジア情勢が不安定化を増すことに懸念を表明した。前大統領は、議会選挙で政府側による不正があったとする野党の抗議行動や混乱がここまで拡大するとは「全く予測しなかった」と語った。抗議行動が3週間で全国規模に広がった理由として、「外国の情報機関が私の退陣を周到に画策し、野党勢力を支援したからだ」と述べた

たとえば05年キルギスで革命が起こりました。この時失脚したアカエフ大統領は、なんといったか?

「政変では米国の機関が重要な役割を果たした。半年前から米国の主導で『チューリップ革命』が周到に準備されていた」
(時事通信05年4月7日)

「彼らは野党勢力を訓練・支援し、旧ユーゴスラビア、グルジア、ウクライナに続く革命を画策した」
(同前)

2011年12月モスクワで大規模デモが起こった時、プーチンは何をいったか???

ロシアのプーチン首相、デモを扇動と米国を非難

 

【モスクワ(CNN)】ロシアのプーチン首相は8日、先の下院選をめぐる不正疑惑に対する抗議デモを米国が扇動していると非難した。クリントン米国務長官は同5日、「選挙のやり方に関する深刻な懸念」があり「しっかりした調査」を求めるとの発言を行っていた。8日、国営テレビに出演したプーチン首相はこのクリントン国務長官の発言が「米国務省の支援を受けた」反政府勢力に対し、行動を促すシグナルを送ったと非難。また、国内からの批判と外国からの批判は質が異なるとし、ロシアは「外国からの干渉」から身を守らなければならないと述べた。(CNN.co.jp 11年12月9日)

これらすべての発言が、「被害妄想と考えることは難しいです。特に、失脚したシェワルナゼやアカエフが、アメリカについてウソをついても、まったく得にはなりません。香港についてはまだはっきりわかりませんが。

もしアメリカがやっているとしたら、何のために?わかりますね。2018年に始まったのは「貿易戦争」ではなく、「覇権戦争」なのです。つまり、アメリカは、「中国共産党政権が倒れるまで戦いつづける決意をしている。(少なくとも、現時点ではです。これが来年の選挙でボンヤリ親中派のバイデンさんが勝つと変わるかもしれません)。

では、どうやって政権を打倒するのか?関税をあげ、中国経済を疲弊させる(経済戦)。ファーウェイを世界市場から追放する(したい)(経済戦)。ウイグル100万人強制収容所の件で、中国を「悪魔化」する(情報戦)。台湾支援を強化する(代理戦争)。

そしてデモも覇権戦争の有効な武器です。たとえば、ドイツでは1989年、それでベルリンの壁が崩れました。そして、東欧民主革命が起こった。03年ジョージア、04年ウクライナ、05年キルギス革命が起こった。10年~11年、アラブの春で、中東、北アフリカの独裁政権が続々と倒れた

もし、アメリカが香港デモをオーガナイズしているのなら、以前にも書きましたが、「第2次天安門事件が起こり、それを口実に、米欧日・対中経済制裁にもっていきたいのでしょう。クリミア併合後の対ロシアのように。

そうなると、アメリカ企業も相当な損害が出ますが、「覇権にはかえられない!」と決意している勢力が、今のアメリカを牛耳っている。それは、トランプさんというより、昨年10月、中国に「宣戦布告演説」をしたペンスさんのグループなのでしょう。

いずれにしても、日本政府は、「今世界は戦争中という認識を強く持ってほしいと思います。そして「戦術的」問題に深入りしないで欲しいです。

image by: Wong Tsz Kiu Katy / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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