サウジ攻撃の前に何が起こっていたか
サウジ攻撃の前に起こっていたことを知ると、この事件の不可解さがわかります。
まずトランプさんは9月10日、補佐官のボルトンさんを解任しました。ボルトンさんは、「イランを空爆せよ!」と主張していた「最強硬派」。それで、彼が解任された意味について私は、9月13日号「決裂の米国。死神ボルトンの電撃解任は日本にとって吉か凶か」でこう書きました。
ボルトンさんは、イラン問題で「最強硬派」です。イランへの空爆を主張していた。そうなると、日本は厳しい立場に立たされます。アメリカは、日本の同盟国。イランは、日本の友好国。ボルトンさんが解任されたことで、アメリカとイランは和解の方向にむかうかもしれません。
すると、予想どおり、トランプはイランとの和解に動きはじめたのです。
米、原油禁輸で適用除外検討 対イラン、核で譲歩狙う
共同 9/14(土)17:57配信
【ワシントン共同】トランプ米政権が、イラン産原油の禁輸措置について一部の国・地域の適用除外を復活させる案の検討を始めたことが13日分かった。米政府関係者が共同通信に明らかにした。離脱したイラン核合意に代わる新たな合意を目指す米政権は、イラン経済の生命線である原油への締め付けを緩め、核・ミサイル問題で譲歩を引き出す狙いとみられる。
つまり、トランプは、イランが原油輸出を一部再開できるようにして、新しいディールを持ちかけようとしていた。
トランプ氏は今月のニューヨークでの国連総会に合わせ、イランのロウハニ大統領と前提条件なしに首脳会談を行う用意があると表明。対立を緩和して再交渉入りできるかどうか注目されている。
(同上)
9月17日から国連総会が開かれる。トランプは、これにあわせてロウハニ大統領と首脳会談し、和解への一歩を踏み出そうとしていた。ところが、14日のサウジ攻撃ですべてがぶち壊しになった。イランとの和解を願っていたトランプも、強い姿勢を見せる必要に迫られた。
トランプ氏「結果によっては臨戦態勢」報復示唆
読売新聞 9/16(月)20:52配信
【ワシントン=船越翔】米国のトランプ大統領は15日、サウジアラビアの石油関連施設に対する攻撃について、「検証結果によっては臨戦態勢をとる」とツイッターに書き込んだ。米国はイランが関与したとの見方を示しており、報復措置も辞さない構えを示唆したものだ。米イラン間の緊張がさらに高まる恐れもある。トランプ氏はツイッターで「我々には犯人を知っていると信じるだけの根拠がある」と強調しつつ、サウジによる検証結果を基に、米政府としての対応を判断する考えを示した。16日にも「米国は中東の原油を必要としているわけではないが、我々の同盟国は守る!」と投稿した。
ちなみにイランの反応は、どうなのでしょうか?
イラン外務省のムサビ報道官は16日の定例会見で「イランが関与したという米国の批判は根拠がなく、受け入れられない」と強調。イラン政府のラビイー報道官も「イエメン内戦の根本的な問題に取り組まず、事実無根の批判を続けている」と語った。
(朝日新聞DIGITAL 9月16日)
ここまでの流れを、もう一度見てみます。
9月10日、トランプ、イラン空爆を主張するボルトンさんを解任。
9月13日、トランプ政権がイラン制裁を緩め、同国との和解を模索していることが明らかになる。トランプは9月17日からはじまる国連総会に出席するロウハニ大統領と会談する意向を示す。
9月14日、フーシ派がサウジの石油施設を攻撃。ポンペオ国務長官は、「イランの仕業!」と断定。
9月15日、トランプは、「検証結果によっては臨戦態勢をとる」とツイート。
流れを追ってみると、
- トランプには、イランと和解する準備があった
- だが、今回のサウジ攻撃で、すべてがぶち壊しになった
なぜイランがこのようなことをするのか、普通に考えたら意味わかんないですね。
安倍総理がイランを訪れていた6月13日、日本のタンカーが攻撃されました。アメリカは、今回同様、即座に「イランがやった!」と宣言しました。ところが、この見解を支持したのは、イギリス、サウジ、イスラエルなど、「利害がある国だけ」だったのです。この時は、日本すらアメリカの宣言を支持しませんでした。
今回アメリカは、「イランがやった」という確固たる証拠を示すことができるのでしょうか?注目していきましょう。
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