(2)流し読みをせずに、一文ずつ丁寧に理解しながら読む
さあ、自分にとっての最適な本が見つかったら、ぜひじっくり読んでみましょう。自分が読みたくて仕方ない本なら、きっと丁寧に読むことと思います。ここで注意したいのが、流し読みをしないことです。
興味が途中で無くなってきたり、長時間は集中力がもたずに集中力が切れてしまったりすると、だんだん適当に流しながら行間を飛ばして読んでしまうことがあります。
速読の術を身に付けたいなら、流し読みをするのではなく、速読に必要な手順を踏んでスキルを身に付ける別のやり方があります。速読は専用のトレーニングプログラムがあるので、ここでは一旦別のものとして考えましょう。
流し読みをする習慣がついてしまうと怖いのは、きちんと真に意味を理解しなくてもいいや、という脳の思考回路が癖になってしまう点です。ざっくりと大体分かればいいや、と思ってしまうと、意味を勘違いしていたり、正確な意味を聞かれても答えられなかったりします。適当な読解で済ませてしまうと、国語の読解力が低下していきます。
小さい頃に培う読解力は、今後どの教科においても応用できるかなり重要なものなので、小さいうちからきちんと正確に理解しようとする習慣を身に付けておきたいもの。読み飛ばしの読書習慣は、読解力の低下に繋がる訳です。
最近、こんなニュースを見て、愕然としました。こちらのサイトから引用させて頂きます。
https://news.livedoor.com/article/detail/17038836/
「教科書が読めない人」は実はこんなにいる
2019年9月6日 5時10分 東洋経済オンライン
私たちが考案した基礎的・汎用的読解力を測るリーディングスキルテスト(RST)には、「同義文判定」という問題群があります。
200字に満たない2つの文の意味が同じか異なるか、二択で選択します。この能力は記述式問題の答え合わせをするうえで欠かせない能力です。
例えば、こんな問題です。
- 幕府は1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
- 1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
以上の2文は同じ意味でしょうか。
もちろん、答えは「異なる」です。けれども、中学生の正答率は57%にとどまりました。
(途中略)
実際に定期試験で、先程の例題の2つ目のような解答を持ってきて「先生、どうしてこれは×なのですか?」と聞きにくる生徒が少なからずいます。
「意味が違うでしょう」と言うと、「でも、(キーワードとなる語は)全部合ってます。部分点は出ないんですか?」と食い下がるそうです。
(途中略)
前著『AI vs.教科書が読めない子どもたち』に出てくる、悪名高き「アミラーゼ問題」に日本人大学院生は全員不正解。唯一正解したのが中国からの留学生だったというのです。
「アミラーゼ問題」とは以下のような問題です。
次の文を読みなさい。
アミラーゼという酵素はグルコースが繋がってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても形が違うセルロースは分解できない。
この文脈において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
セルロースは( )と形が違う。
(1)デンプン (2)アミラーゼ (3)グルコース (4)酵素
(途中略)
(※アミラーゼ問題の答えは、(1)デンプン)
面白い問題ですね。これらの具体的な2問を、ぜひ身近な人に試してみてください。大人でも意外と間違えたりして…?!
この問題に正解するためには、文章の構造をよく分析して正しい関係性を考えることが必要です。
普段から流し読みをしていて、単語だけ拾って自分の頭の中で適当に関係性をつなげていけばいいや、という読み方がクセになってしまうと、こうした問題が出たときにうっかり間違ってしまいます。
単語を繋げるだけだと、何が起きているのかシーンを想像することくらいはできますが、因果関係だったり、対比関係だったり、文章の関係性をきちんと理解するのが疎かになってしまいます。長年、流し読みが自分のベースの習慣となってしまうと国語の読解問題で微妙な差異を問う問題ができず、まんまとひっかかってしまいます。
参考書だって、何冊も手をつけて流し読みをするより、1冊を丁寧にじっくりとことん理解する方が、本当の自分の実力になります。こうした理由から、私は流し読みをオススメできません。
日本語の構造は非常に繊細で、1文字違うだけでも意味合いが変わってくることがあります。ゆくゆくは、社会に出て仕事をするようになっても、読解力がなく、ちょっとした日本語の差に気付かないと、大きな発注ミスなどを起こしかねません。
読解力は相手の言いたいことを正確に理解するために不可欠で、生きていく上で必要な力だと思います。その土台となる底力は、小さい頃の読書習慣で養われていきます。だから、流し読みをせずに、一文ずつ丁寧に理解しながら読む習慣を私はとても大切にしています。
最近では、スマホアプリなどで月に定額を払えば、好きな本や電子参考書が使い放題になるサービスもあるそうです。正しい使い方をすれば素晴らしいものですが、使い方を誤ってしまうとリスクもともなうものだと思うので、どういった読み方、使い方をするのか、注意しましょう。