どうなる今年のアカデミー賞。NYの映画通日本人が評価する作品は

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第3位 『ブラック・クランズマン』

https://bkm-movie.jp/

映画に決まりなんてないんだよ、スパイク・リー監督にそう言われているような映画でした。“ルールなし”の映画は衝撃でした。白人至上主義KKKの歴史は日本人には理解しがたいけれど、詳しくなくても映画は楽しめます。で、詳しくなったら、もっと楽しめます。この映画のおかげで、KKKの歴史を自分なりにめちゃくちゃ勉強しました(笑)忙しいくせに。

映画は1回見て、自分なりに考察して、過去の作品を参照にして、自分なりに勉強して、もう1回見ても鑑賞に耐えられる、というか2回目の方がずっと面白い。テレビドラマにはない楽しみ方を教えてくれた作品でした。東京で1回、ニューヨークで2回鑑賞。

事実を基にした人種差別映画としてはオスカーを獲得した「グリーン・ブック」と比較されがちですが、こっちの方がずっとスタイリッシュでワクワクします。説教臭さなし。多分、後年、もっと評価されるであろう作品です。

第2位 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

http://www.onceinhollywood.jp/

おそらく、この作品の存在自体を、日本人でいちばん最初に知ったのは僕かと思います(そんなわきゃねえか・笑)。

数年前、ニューヨークの某映画会社の役員と食事した際、「ここだけの話、まだRumor(噂話)の段階だけれど、タランティーノ監督で、レオナルド・ディカプリオと、ブラッド・ピットと、〇〇の3人が共演するかもしれないんだ」と耳打ちしてくれました。「うっそー、その3人の共演なんてありえないだろう」と話半分で聞いていました(当時は、もうひとり、レオとブラピに負けないビッグスターの名前も出ていました)。

で、そこから数ヶ月後、IMDB Proという業界向けの映画サイトで、写真もないテキストだけで、「タランティーノ作品で、レオとブラッドが共演か!」というニュースを見ました。で、そこから数週間後、IMDBの一般でニュースになり、そこからまた数週間後、日本の映画サイトで、このニュースが流れました。

その点からいっても思い入れのあった作品。劇場公開初日に観に行きました。翌週にも劇場に足を運び、東京は有楽町でも1回。出張時の機内上映を数に入れていいなら、合計4回鑑賞。

期待しまくって観に行ったけど、その期待を大きく上回るほどの作品でした。すべてのタランティーノ作品を見てきた僕の、「パルプ・フィクション」を超える、タランティーノ作品歴代ナンバー1です。

たぶん、この作品の評論は腐るほど、日本語のYouTubeでも出ていると思います。なので、世間で言われている概要・解説・考察はハショリます。

ただ、映画のラスト、「あぁ、タランティーノは物語の力を本当に信じているんだなぁ」と思うと、不覚にも泣きそうになりました。「史実? 知るか。オレのストーリーじゃあ、あくまで、こうなんだよ!」という「映画オタク」の矜持みたいなものも伝わってきました。

あと、やたら、ここ数年、みんなが口にする「伏線と回収」(笑)ってやつ? そんなものを期待して観たら、裏切られます。「自身の作品の中で、勝手にフラグを立てておいて、あとでその理由を説明する」ことに、いまさらカタルシスを感じられない。日本中が、この「伏線と回収」って言い始めたのは、「カメラを止めるな!」以降かな? 一次方程式のパズルを作中に散りばめられて、あとでそのピースをハメていくのが、そんなにすごいか? (笑)「世にも奇妙な物語」でもやってたぞ、そんなの。

実は、近年、この「伏線と回収」を最初に見事にやってのけたのは(僕の記憶が正しければ)それこそ94年の「パルプ・フィクション」。タランティーノ本人でした。で、この作品で、その張本人タランティーノは、そんなわっかりやすい「伏線と回収」は見せてくれません。そんなインスタントなカタルシスを期待してる観客を嘲笑うよう。足の裏フェチと公言する監督は、これまた観客を嘲笑うように、やたら女性の足の裏ばかりのシーンを差し込みます。

なんなら、実は、女性の脇毛フェチなんじゃねえか、と思わされるショットまで。どちらにしろ、監督自身が楽しみまくって撮ってるから、観ているこちらは楽しくないわけがない。人を選ぶ作品だとは思いますが、個人的には何度見ても飽きがこない、鑑賞に耐えられる作品です。

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