天を敬い人を愛する。西郷隆盛にも影響を与えた儒学者の「一言」

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多くの人材を輩出した江戸幕府の学問所・昌平黌(しょうへいこう)で儒官(総長)を務めた佐藤一斎は、儒学や朱子学に止まらない広い見識で知られています。その著書『言志四録』は、西郷隆盛の終生の愛読書として影響を与えたともいわれます。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、そんな佐藤一斎の思想の片鱗を、疋田啓佑さんと深尾凱子の対談を通して紹介しています。

「敬天愛人」の原点は佐藤一斎。疋田啓佑(福岡女子大学名誉教授)×深尾凱子(読売新聞社社友)

晩年になるほど執筆や子弟教育に打ち込んでいった幕末の儒官・佐藤一斎。その学問の広さは、多くの弟子たちを輩出したことからも窺い知れます。

直接の教えを受けてはいないものの、明治維新の立役者の一人、西郷隆盛もまた、佐藤一斎に大きな影響を受けた一人でした。


疋田 「昌平黌の佐藤一斎門下からは数々の逸材が誕生します。佐久間象山や渡辺崋山、横井小楠、山田方谷などは陽明学者としてよく知られていますが、表には出ていない朱子学者もたくさんいます。このことも一斎の学問の広さを物語っているように思うのです」

深尾 「佐久間象山や渡辺崋山は幕府から睨まれて最後には非業の死を遂げていますね。蛮社の獄の時、一斎は崋山を擁護することをしなかったというので、ドナルド・キーンさんは著書『渡辺崋山』の中でそれを批判的に書いています」

疋田 「一斎は幕府の儒官という立場があったわけですから、それもある意味仕方がなかったのかもしれません。大塩平八郎が本に序文を求めた時も、返事すらしていない。『言志録』の中に、“分を知り然る後に足るを知る”という言葉がありますが、自分の分、立場を弁えることが一斎の信条だったのでしょう」

深尾 「一斎の直接の弟子ではありませんが、2018年、NHK大河ドラマになった西郷隆盛も一斎の影響を受けた一人ですね。『言志四録』に収められた1133条の中から101か条を選び『手抄言志録』として座右に置いています」

疋田 「ええ。例えば『手抄言志録』の第2条に『言志録』の“凡(およ)そ事を作(な)すには、須(すべか)らく天に事(つか)うるの心のあるを要すべし。人に示すの念あるを要せず”を採っています。これは『南洲翁遺訓』にある“人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして己を尽くして人を咎(とが)めず、我が誠の足らざるを尋ぬべし”という言葉と符合します。それを端的に集約したのが“敬天愛人”の四文字です」

深尾 「そう考えると、西郷が一斎にどれだけ大きな影響を受けたかがよく分かります」

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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