元国税が暴くパソナの闇。持続化給付金の不正受給を防げぬ当然の理由

 

不正受給の大量発生は必然。誰が責任を取るのか?

本メルマガの6月16日号でも述べたように、本来、国の給付事業というのは国税庁などがやるべきであり、それが一番安全で確実だったのです。民間に委託する意味はまったくなかったのです。

民間企業は、全国の事業者の情報も持っておらず、調査権もありません。不正受給をしようと思えばいくらでもできるのです。

そして、案の定、持続化給付金では大量の不正受給が発生しました。しかもその手口は、今まで事業をやってこなかった普通の会社員や大学生が、持続化給付金を申請するだけという驚くほど単純なものでした。

たとえば、山梨の大学生が、事業を行っていないにもかかわらず、事業を行っていることを装い、100万円の給付を受けていたことが報じられました。

また新聞社の沖縄タイムス社の社員がこれも事業を行っているふりをして180万円の給付金を受けていたことが発覚しています。しかも、この沖縄の事件は、税理士や暴力団が絡んだ組織的な不正受給が行われた可能性があると見られています。まだ全貌は明らかになっていませんが、数億円単位での不正受給があったとみられています。

これらの事件は、給付を受けてから発覚したものです。申請の時点で発覚したものではありません。つまり一旦は給付されているということです。

逆に言えば持続化給付金は「普通の会社員や大学生が申請しても簡単に給付されてしまう」というような、ずさんな仕組みを持っていたのです。申請の時点では、まったくチェック機能がなかったに等しいのです。そして、おそらく発覚したのは氷山の一角です。

やった者勝ち?経産省や民間に不正発見能力はない

経済産業省は、これから不正受給について調査していくと述べています。が、そもそも経済産業省は、日本全国の事業者を調査するようなことには慣れていません。おっとり刀で大量の不正受給者をすべて見つけ出すことなどは絶対に不可能です。

もし国税庁がこの業務を行っていれば、こんな杜撰なことには絶対にならなかったはずです。まず申請の時点で、事業を行っていたかどうかは簡単にチェックできます。またもし不正があっても、国税庁には全国に調査網があるため、少しでも不審な点があればその場で調査できるのです。

不正受給者の側も、窓口が国税庁であればそう簡単には「詐欺をしよう」とは思わないはずです。

どう考えても、持続化給付金を民間企業に委ねたのは不自然で不合理です。「自分たちの利権を守るために、国民に多大な損害をもたらす」という、持続化給付金はまさに日本の官僚たちの生き方を象徴する事業だったといえるのです。

初月無料のお試し購読はこちら

 

image by:Shutterstock

初月無料購読ですぐ読める! 10月配信済みバックナンバー

※2020年10月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、10月分のメルマガがすべてすぐに届きます。

  • 「テレワーク時代の給料の払い方」「決算書を見るとき一番大事なこと」「持続化給付金の闇」(2020/10/1)

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

初月無料の定期購読手続きを完了後各月バックナンバーをお求めください。

2020年9月分

  • 「テレワークでの給料の払い方11」「決算書は小遣い帳と同じ」「二階幹事長のつくる日本」(2020/9/16)
  • 「安倍政権の功罪1」「コンコルドの誤謬」(2020/9/1)

2020年8月分

  • 「ふるさと納税について今一度わかりやすく説明しましょう」「アベノミクスで得した人、損した人」(2020/8/16)
  • 「誰が何のためにGOTOトラベルを推進したのか?」「会社と業務委託契約を結べば税金が劇的に安くなる」(2020/8/1)

2020年7月分

  • 「“生命保険は掛け捨てがいい”という大誤解」「会社と社員の新しい形”業務委託契約”とは?」(2020/7/16)
  • 「新型コロナ対策を遅らせた官僚の天下り」「ソフトバンク・ショックは起こるのか?」(2020/7/1)

2020年6月分

  • 「『鬼滅の刃』制作会社の脱税」「持続化給付金は天下りの温床」(2020/6/15)
  • 「新型コロナ関連の減税」「なぜアビガンはなかなか承認されないのか?」(2020/6/1)

2020年5月分

  • 「フリーランス、中小企業は持続化給付金を忘れずに」「新型コロナの本当の死者数とは?」(2020/5/16)
  • 「なぜ日本はICU(集中治療室)が少ないのか?」(2020/5/1)

2020年4月分

  • 「国や自治体の“助成金”を活用しよう」(2020/4/16)
  • 「日本政府のタックスヘイブン対策とは?」「安倍内閣は削った予備費を何に使っていたのか?」(2020/4/1)

2020年3月分

  • 「タワーマンション節税の落とし穴」「今こそ世界通貨の発行を」(2020/3/16)
  • 「確定申告の裏ワザ~収入の波が大きい業種の特別制度とは?~」「なぜタワーマンション高層階の固定資産税は安いのか?」「新型コロナ対策が遅れを取った財政的理由」(2020/3/1)

2020年2月分

  • 「確定申告の大誤解2~確定申告の期限の裏話~」「タワーマンションは相続税対策になるか?」(2020/2/16)
  • 「確定申告の大誤解1~医療費控除~」「節税アイテムとしてのタワーマンションその1」(2020/2/1)

2020年1月分

  • 「鳩山元総務相遺族の申告漏れ」「わざと雑損控除を受けさせない~国税庁サイトの誤誘導」(2020/1/16)
  • 【新年特別号】税務署員は皆やっている!「扶養控除」で税金を裏技的に安くする方法(2020/1/1)
  • 「消費税の不正還付」「税務署員は市民の無知につけこむ」(2020/1/1)

2019年12月分

  • 「情報商材の脱税」「税務署は平気で納税者を騙す」(2019/12/16)
  • 「富裕層の課税漏れ」「かんぽよりひどい!税務署員のノルマ」(2019/12/1)

2019年11月分

  • 「台風などの被害で税金が戻ってくる」「安倍首相の地元で公共事業が激増!」(2019/11/16)
  • 「徳井氏はきちんと申告したほうが税金は安かった!?」「食べ歩きを経費で落とす方法」(2019/11/1)

2019年10月分

  • 「研究開発費は最強の節税アイテム」「消費税が上がるとサラリーマンの給料が減る理由」(2019/10/16)
  • 「福利厚生費はどこまで認められるのか?」「信長の大減税」(2019/10/1)

2019年9月分

  • 「なぜ企業の内部留保金が増えると不景気になるのか?」「給料の代わりに車を買い与える」(2019/9/16)
  • 「会社に旅行費用を出してもらう方法」「年金を喰い物にする官僚たち」(2019/9/1)

※1ヶ月分330円(税込)で購入できます。

大村大次郎この著者の記事一覧

元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授する有料メルマガ。自営業、経営者にオススメ。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 大村大次郎の本音で役に立つ税金情報 』

【著者】 大村大次郎 【月額】 初月無料!¥330(税込)/月 【発行周期】 毎月 1日・16日 発行予定

print

  • 元国税が暴くパソナの闇。持続化給付金の不正受給を防げぬ当然の理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け