飯塚叩きが示す日本人の劣化。なぜ高齢ドライバー問題の本質を見誤る?

 

「体制は自由なのに、自由な思考をしない」のが日本人

ということで、私が受験生のころからずっと愛していた文化放送の出番がなくなったと思ったら、捨てる神あれば、拾う神ありで、ラジオNikkeiのゲストに呼ばれた。

パーソナリティは東海大学教授の葉千栄さん。今はなくなった朝日ニュースターの番組でご一緒したことがあるが、シャープな人であり、日本の将来を憂えてくれる親日家でもある。たぶん、前にお会いしたのは10年くらい前だったと思うが、その間(それ以前から始まっていたが)の日本の凋落ぶりを嘆いておられた。

中国がその間にどんどんのしてきたので、それを実感するのだろう。早大の大学院で学び、日本での経験を積むことで中国に戻っても有利になると考えたのかもしれない。

今、日本の大学で学んできたり、教授職についていたりしても、中国ではそれほど有利にならない。なめられた国になっていて損をしたと思っておられるのかもしれない(これは私の勝手な想像だが)。

ITでもスマホでも、いろいろな分野で中国に勝てなくなり、自動車産業でもドイツ車と比べてさっぱり日本車は売れていない。私もアメリカに行くたびに日本の落ち目を痛感する。

その葉先生が、最初に言った言葉が鮮烈に印象に残っている。

「中国は体制はめちゃくちゃだし、人々の自由を奪っています。でも、一人一人は自由に考えている。日本は体制は自由なのに、だれもが自由な思考をしない」

その通りだろう。

老人の事故でも可哀想だと言えば、コテンパンにネットで書かれる。コロナの自粛でも守らない人はコテンパンだ。お上と違う意見がとても言えそうな雰囲気でない(お上のほうが自粛がまずいと考えているようだが、マスコミがメンツにこだわって、自由な考えを許さないという側面もあるが)。

同調圧力が強くて、とても自由とは言えない。学問の世界でも上が強すぎて、自由な発想が許されない。近藤誠氏の乳房温存療法の紹介でもわかるが、教授がメンツを潰されるとコテンパンにそれを潰そうとする。

普通の国では面接入試をやる際に、ディスカッションができるかどうか、つまり教授に反論ができるかどうかを見るのに、この国では教授の言うことを聞きそうかどうかを判断基準にする。

だから、面接入試が始まってからというもの学生運動がほとんどなくなった。これでは中国以下と言われても仕方がない。

中国だって、習近平へのうわべの忠義を求めても、教授に逆らってはいけないということはない。

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