竹中平蔵氏が抱える心の闇。日本が日本であることへの不信と絶望

Trevor_Manuel_Heizo_Takenaka_and_Michael_Elliott_20090128
 

11月末に「#竹中平蔵つまみ出せ」というタグがツイッターでトレンド入りするなど、ここに来てにわかに激しい批判に晒されている竹中平蔵氏。その他さまざまなメディアでも竹中氏についての批評が展開されていますが、識者はどう見ているのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、「非正規雇用を増やした張本人」というバッシング理由に対しては抵抗感があるとし、竹中氏が本当に批判されるべき点を鋭く指摘しています。

【関連】竹中平蔵よ大罪を償え。元国税が暴く賃下げと非正規、一億総貧困化のカラクリ
【関連】「#竹中平蔵つまみだせ」の声に本人も戦々恐々?非正規激増の戦犯に高まる批判
【関連】竹中平蔵氏に逃げ道なし。元国税が暴くパソナと政府間「黒いカネ」の流れ
【関連】元国税が暴く竹中平蔵氏の住民税脱税疑惑「ほぼクロ」の決定的証拠

竹中平蔵氏、批判されるべきは成長放棄路線

竹中平蔵氏といえば、小泉内閣で経済財政政策担当大臣、IT担当大臣とか金融担当大臣をやり、2004年には参議院議員選挙に比例代表で立候補してトップ当選するなど、政治の世界でも大きな存在感を発揮した時期がありました。その後、2006年には政界引退を表明して、以降は大学教授としての活動のかたわら財界活動もしています。

政界で活躍していた時代からは15年近くが経過して、やや過去の人だと思っていたのですが、ここへ来て同氏への批判が激しくなっているようです。

その批判というのは、「構造改革をやって非正規雇用を増やした張本人」であるにもかかわらず、人材派遣会社の役員をやっているとか、「BI(ベーシックインカム)7万円」という提言をしているが、そんな金額では生存権の否定だといいうようなものが多いようです。

このうち、BIについて言えば、あれは思考実験のようなもので、仮に社会保険庁とか、市町村の生活保護受給判定機能などを全部リストラして、そのコストと、全ての公的年金を停止してBIに回せばもっと金額を上乗せできるかもしれません。ですが、そこまでの政府のリストラをやれば、玉突き的に多くの問題が出るので、7万円プラス自助と共助という「パッケージ」を提案したということで、彼なりの理屈は通っているわけです。

この点について言えば、教会やボランティアの組織、あるいは寄付カルチャーと寄付税制などがない日本の場合は、共助の仕組みなどは、本当にカルチャーの部分から作っていかねばならないわけです。そうなのですが、そこを全部すっ飛ばして「財源からは7万という逆算ができました」と冷たく言い放つというのは、そもそも世論に受けることなど考えていない感じです。

一方で問題なのは、「非正規雇用を増やした張本人」だから批判するという態度です。私は竹中氏の肩を持つわけではないということを、予めお断りしておきますが、それでもこの「張本人」呼ばわりというのは、抵抗感があります。

1つは、非正規雇用を増やしたのは90年代の景気低迷であって、少なくとも2000年代に原因があるわけではないということです。もう1つは、仮に2000年代に(あるいは90年代にも)構造改革が進まずにあらゆるフルタイム雇用と新卒採用が100%温存されていたら、日本経済はもっと早く破綻していた可能性があるからです。その場合ですが、もしかしたらデフレではなく、ハイパーインフレと超円安になっていたかもしれません。そうなれば資源を他国に依存する日本の場合は、国民の生活水準がもっと激しく崩壊していたかもしれないのです。

print
いま読まれてます

  • 竹中平蔵氏が抱える心の闇。日本が日本であることへの不信と絶望
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け