●uttiiの眼
仮に自殺に至らなくても、うつ病やその他の精神障害を発症した人は遙かに多くいるだろう。あるいは、そこまで至らなくとも、会社にいられなくなって、そのことが原因で経済的に困窮してしまうケースはもっと多いかもしれない。まさしく「自殺」のケースは“氷山の一角”に過ぎないと見るべきだ。
職場環境の中に様々な差別の構造が持ち込まれるようになったことがこうした問題の遠因になっているかもしれない。労働者に支払う賃金を「賃金コスト」と見なす経営者は、非正規化を亢進させるだけでなく、社員を徹底的に働かせ、絞り上げる「努力」を惜しまない。当然、職場の環境は悪化し、荒んだ空気の中でパワハラが横行する下地ができあがる。
実際に社員が自殺に至るか否かには、上司たちの個性など、様々な要素が介在するだろうが、労災認定されるケースのこの広がりを見れば、個性を飛び越えた問題であることも、また、明らかだ。そして、もう二度と「死ぬまで働かされる」などということがないよう、今、新型コロナ禍で労働環境が一変したことを奇貨として、十分考えきっておきたいところだ。
image by:Alexander Tolstykh / Shutterstock.com
ページ: 1 2