甘利幹事長は真っ黒。元検事が読み解く「検察審査会議決書」の説得力

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経済再生担当相在任時の2016年、都市再生機構を巡る「あっせん利得疑惑」により大臣を辞任するものの、検察の不起訴処分を錦の御旗とするかのように「説明責任は果たした」と言い張り、自民党幹事長という要職で権勢を振るう甘利明氏。そもそもなぜ検察は、この疑惑に関して甘利氏と秘書を不起訴としたのでしょうか。今回のメルマガ『権力と戦う弁護士・郷原信郎の“長いものには巻かれない生き方”』では元検事で弁護士の郷原信郎さんが、その理由を知る手立てとすべく、秘書に対して「不起訴不当」とした検察審査会の議決書の全文を公開し内容を分かりやすく解説。その上で、検察審査会の制度上の欠陥を指摘しています。

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プロフィール:郷原信郎(ごうはら・のぶお)1955年島根県松江市生まれ。1977年東京大学理学部卒業。鉱山会社に地質技術者として就職後、1年半で退職、独学で司法試験受験、25歳で合格。1983年検事任官。2005年桐蔭横浜大学に派遣され法科大学院教授、この頃から、組織のコンプライアンス論、企業不祥事の研究に取り組む。2006年検事退官。2008年郷原総合法律事務所開設。2009年総務省顧問・コンプライアンス室長。2012年 関西大学特任教授。2017年横浜市コンプライアンス顧問。コンプライアンス関係、検察関係の著書多数。

甘利事件「検察審査会議決書」を解説する

直近の私のYahoo!記事「甘利氏の『説明責任』は不起訴処分で否定されるものではない ~注目される衆院選神奈川13区」では、自民党幹事長に就任した甘利明氏のあっせん利得疑惑に関して、検察の不起訴処分が行われていることが、説明責任が問われない理由になるのかについて私の見解を述べた。

あっせん利得処罰法は、国会議員等の政治家が、支持者・支援者等の国民から依頼され、裁量の範囲内の行政行為について行政庁等に働きかけて依頼に応えようとすることは、国民の声・要望を行政行為に反映させるための政治活動として必要なものでもあることに鑑み、政治活動全般を委縮させることがないよう、あっせん利得罪による処罰の犯意について、あっせんの対象を、「行政処分」と「契約」に関するものに限定し、さらに、国会議員等が「権限に基づく影響力を行使」した場合に限定することで、「二重の絞り」をかけ、看過できない重大な事案だけを処罰の対象としている。

甘利氏のあっせん利得疑惑については、秘書が、依頼者とURとの補償交渉に介入したこと、秘書と甘利氏本人が現金を受領した事実があったことが明らかになっていたが、告発されていた甘利氏と秘書は、いずれも不起訴処分となり、それに対して検察審査会への申立てが行われ、秘書の事件については「不起訴不当」の議決が行われた。

補償は「補償契約」によって決着するので、「契約」に関する「あっせん」であることは明らかである。また、「国会議員の権限に基づく影響力」についても、現職閣僚で有力な与党議員であるうえ、2008年に麻生内閣で行革担当大臣に就任した甘利氏は、2012年に自民党が政権に復帰して以降、組織の在り方や理事長の同意人事など、URをめぐる問題が与党内で議論される場合には相当大きな発言力を持っていたものと考えられ、「議員としての影響力の行使」も十分可能な立場だったといえる。

このようなことから、私は、甘利氏についてのあっせん利得疑惑は、「二重の絞り」をかけられたあっせん利得処罰法の「ど真ん中のストライク」に近い事案だと表現していたが、検察はなぜ、すべて不起訴にしてしまったのか。

一般的には検察の不起訴処分の理由は公表されない。しかし、この件については、検察審査会が公表した「不起訴不当」を含む議決書を入手することができた。それによって、検察の不起訴の理由、そして、それが「不当」だとする検察審査会の判断を知ることができる。「不起訴不当」の判断について、具体的な事実に基づき、かなり踏み込んだ判断が示されている。議決書全文を引用した上、解説を行うこととしたい。

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