甘利幹事長は真っ黒。元検事が読み解く「検察審査会議決書」の説得力

 

【解説】

衆議院議員の甘利明氏とその秘書K健一、S陵允の3名の告発事件に対して、検察は、いずれも「嫌疑不十分」で不起訴とした。このうち、甘利氏に対する不起訴は、甘利氏が秘書2名の一方又は双方と共謀していたことを認め得る証拠はないとして「相当」とされているが、秘書2名の不起訴処分については、「不起訴としたことには納得できないため,検察官に再捜査及び再考を求める必要があり」とされ、不起訴不当の議決が行われている。

秘書2名の不起訴不当とする理由の中で注目すべきは、「権限に基づく影響力の行使」についての判断だ。まず、A社が要求する額の補償金を支払わせるよう陳情した後の経過について、以下のように述べている。

(ア) A社が独立行政法人Cに対してこの補償交渉1に関する内容証明郵便を送り,その後に大和事務所が独立行政法人Cに接触することになった。
(イ) 被疑者Kから依頼を受けたD秘書は,同年6月頃,事前に予約を入れないまま独立行政法人C本社を訪れた。
(ウ) その職員が応接室にてD秘書と面談し、D秘書は,この職員に対しA社が送付した内容証明郵便に対する回答の状況を問い,独立行政法人Cの担当部署において検討している旨の回答を得た。
(エ)A社は,同年8月,独立行政法人Cとの間で補償契約を締結し,同月中に,独立行政法人Cから,同契約に基づく補償金の一部の支払いを受けた。
(オ)Bは,前項の補償金の支払いを受けた日に,被疑者Kに供与するための資金として現金を受け取り,大和事務所に赴いたが,被疑者K」に手渡したのは現金500万円であった。

議決書は、あっせん利得処罰法違反における「請託」について,

「その権限に基づく影響力を行使」してあっせんすることを依頼するまでの必要はない

との解釈、あっせん利得処罰法違反における「その権限に基づく影響力を行使した」について、

あっせんを受けた公務員等の判断に影響を与えるような態様でのあっせんであれば足り,現実にあっせんを受けた公務員等の判断が影響を受けたことは必要ない

との解釈を、それぞれ示している。

そして、「権限に基づく影響力の行使」については、「職務権限の行使・不行使を交換条件的に示す」というような「あっせんを受けた公務員等の判断に影響を与えるような態様の典型例」に当たる行為が認められない場合でも、「当該議員の立場や地位,口利きや働きかけの態様や背景その他の個別具体的事案における事情によっては,公務員等の判断に影響を与えるような態様の行為と認め得る」という一般論を示し、上記(イ)の事実について、

相手方の都合も聞かないまま突然,直接の担当部署でもない相手方の本社に訪問しても対応を断られるのが通常と思われる。D秘書は,あくまでも第三者に過ぎないが,衆議院議員で,有力な国務大臣の一人である被疑者甘利の秘書であるからこそ,応接室に通され,独立行政法人C本社の職員らと面談し,前記の確認をできたとみるのが自然である。

としている。

そして、独立行政法人C(UR)側についても、

本社職員がわざわざ自らの業務時間を割いて,D秘書を面談し,補償交渉1に関する説明をしたのも,それをしないと不利益を受けるおそれがあるからと判断したとみるのが自然である。

としている。

議決書は、このような理由で、「権限に基づく影響力の行使」があったとの判断を示し、検察官の不起訴が不当だとしている。

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