第2 検察審査会の判断
当検察審査会が本件不起訴処分を不当とする理由は,次のとおりである。
1 被疑事実1(1)について(あっせん利得処罰法違反)
(1) 前提事実
関係証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア Bは,平成25年4月頃,A社の総務担当者として独立行政法人Cとの間の,独立行政法人Cによる道路用地取得に関する補償交渉(以下「補償交渉1」という。)に関与することになったが,同年5月頃に独立行政法人Cが検討していた補償金額はA社が主張する補償金額を大きく下回っていた。
イ Bは,同年5月頃,神奈川県大和市内にある被疑者甘利の大和事務所に赴き,被疑者Kに対し,A社と独立行政法人Cとの補償交渉1について,独立行政法人Cに働きかけ,A社が要求する額の補償金を支払わせるよう陳情した。この際,まずA社が独立行政法人Cに対してこの補償交渉1に関する内容証明郵便を送り,その後に大和事務所が独立行政法人Cに接触することになった。
ウ 被疑者Kから依頼を受けたD秘書は,同年6月頃,事前に予約を入れないまま独立行政法人C本社を訪れ,その職員が応接室にてD秘書と面談した。D秘書は,この職員に対しA社が送付した内容証明郵便に対する回答の状況を問い,独立行政法人Cの担当部署において検討している旨の回答を得た。
エ A社は,同年8月,独立行政法人Cとの間で補償契約を締結し,同月中に,独立行政法人Cから,同契約に基づく補償金の一部の支払いを受けた。
オ Bは,前項の補償金の支払いを受けた日に,被疑者Kに供与するための資金として現金を受け取り,大和事務所に赴いたが,被疑者Kに手渡したのは現金500万円であった。
被疑者Kは,Bと協議し,最終的に,このうち300万円を個人的に受領し,残り100万円を県議会議員に寄附することとした。
力 なお,関係証拠上,前記のとおり独立行政法人Cにおいて補償交渉1に関する補償金額を増額することとしたのは,独立行政法人Cにおける算定方法や範囲等の見直し等がきっかけとなっており,D秘書との面談がきっかけとなったと窺わせる証拠はない。
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