プーチンの狂気を悪用する、ウクライナ紛争で“得をした”人物リスト

 

ではウクライナとロシアを離れて眺めてみたらどうでしょうか?

確実に、私たちを含め、世界各国の消費者は損をしています。生産能力の破壊と運搬手段の喪失といった戦争の直接的な影響に加え、欧米諸国とその仲間たちが一致団結してロシアに課す多重的な制裁の影響は私たちの日常生活を直接的・間接的に容赦なく襲っています。

例えば、ロシア産原油・天然ガスの輸入制限が生み出す地政学リスクは、すでに高騰していた燃料費をさらに高騰させ、ガソリン代やガス代、電気代という形で消費者に負担を強いることになっていますし、製造業も大幅なコスト増に見舞われています。その高騰分が価格に転嫁されることで、消費行動を冷ますことになるかもしれません。

ロシアとウクライナで世界の小麦の約3割を占めるとされていますが、現在、両国の小麦をはじめとする穀物の運送が出来ず、また来季に向けた作付けもできるような状況にないため、今後、仮に早期に紛争が終結しても、しばらく農作物の不足からくる価格高騰と、場合によっては、食糧危機の懸念も高まります。

ひまわり油なども製造できなくなるため、小麦・植物性食用油などは今後、供給困難になると予想されます。

そして、コロナからの回復のエンジンとなると期待されていたインフラ整備や建築・建設部門も、ロシア産の金属・鉄鋼資源の供給が止まり(もしくは調達停止)、建材の不足が深刻化してくると予想されています。コロナ禍ではウッドショックが住宅市場を襲いましたが、今度は商用ビルや道路建設などに用いられる鉄鋼などが大幅な供給不足に陥ると見られており、すでにその影響も見られます。

この金属系は、ロシア産が一気に落ち込む中、トルコやインド、韓国などが必死に穴を埋めようと画策し、これを機にシェアを拡大しようとしていますが、ロシアを代替しうるにはまだしばらくかかるようです。そして、世界的な半導体需要の高まりと競争と相まって、電子機器や自動車などの製造も遅れ気味になります。

コロナ禍からの回復のエンジンとなり得る産業部門の熱をセクター横断的に再度冷やしてしまいそうな懸念が拡大しています。

そのあおりは、巡り巡って私たち消費者に転嫁されることになるでしょう。

ウクライナ紛争は、意外なところにも大きな損失を生んでいます。ウクライナ紛争への対応に各国の様々なリソースが集中投下される中、報じられない多様な紛争の当事国となっているアフリカや中東の国民たちも、損害を被っていると言えるでしょう。

以前より何度もこのコーナーでお話をしているエチオピアのティグレイ紛争の被害者、隣国スーダンでの混乱、チュニジアでの内政不安、コンゴやナイジェリアで燻る紛争の火種、なかなか安定しないアルジェリア情勢などといったアフリカにおける紛争や、イランとサウジアラビアの代理戦争ともいわれるイエメン紛争やシリア紛争には、普段以上に国際社会からの関心が行き届かず、半ば見捨てられている状況です。

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ゆえに、独裁者たちの蛮行やIS関連組織などの蛮行が、見過ごされているという悪循環を生んでいます。これも直接的ではないかもしれませんが、ウクライナ紛争が生み出した人道的な損失と言えるかと思います。

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