プーチンの狂気を悪用する、ウクライナ紛争で“得をした”人物リスト

 

英国・ジョンソン首相に至っては、とても皮肉を込めた言い方をすると、ウクライナ紛争は、コロナ自粛下での度重なるパーティー疑惑と、身内からの辞任要求という、自身にとっての政治的な危機を覆い隠し、難局を乗り切る手助けをしたと考えられます。

乗り切ったのか、それとも先送りされたのかは定かではありませんが、ひとまず、危機は乗り切ったようです。

他には、脱メルケル路線を許されたショルツ独首相、イラン核合意交渉の佳境に達していたところで、対欧米の揺さぶり材料を、ロシアへの支援という形で得たイラン政府、そしてアフリカや中東地域で国内紛争を遂行中の各国(例:エチオピア)は、国際社会の非難の矛先がロシアに一斉に向いているうちに、“大願成就”を果たそうとしている状況…などが“得した人たち”リストに挙げられます。

そしてもちろん、国際経済がコロナウイルスのパンデミック以降スランプに陥り、忍耐モードに入っている中、軍需産業のみなさんはしっかりと利益を増加させています。

ところで今回のウクライナ紛争・危機において、あまりプレゼンスが見えない中国・習近平国家主席は、得をしたのでしょうか?それとも損をしたのでしょうか?

個人的な感触では、損得を両方経験し、そのバランスのとり方に苦慮していると思われます。

まず損をしたとしたら、【プーチン大統領の本心を読み違えたことが生み出したもろもろの不都合】を被ったことでしょうか。

例えば、2月4日に北京冬季五輪の開幕に合わせて訪中したプーチン大統領と首脳会談を行った際、かねてより噂されていた中ロ軍事同盟の締結を上回る表現で【特別な関係をアピールし、対米共闘を誓った】ことで、ここまでの全面的な侵攻はないと踏んでいたようですが、24日の開戦を受け、事実上、顔に泥を塗られるという事態になりました。

【1】のコーナーでもお話ししている中国流交渉術の秘密の一つにも【面子をつぶさないこと】を挙げましたが、まさにそれを“盟友であり、特別な関係にある”プーチン大統領にやられたことは、何とも言えない大きな批判の材料を、彼を警戒する共産党の長老たちに与えてしまったと言われています。

今秋開催の5年に一度の共産党大会で、異例の第3期目の国家主席任期を得たい習近平国家主席としては、怒り心頭でしょうが、UNやその他の外交舞台において、ロシアに対して【大きな貸しを作ること】で、いずれ実行する台湾侵攻・併合時のバックアップを取り付けようとしています。

まさに今損をしておいて、後日、利子をつけて恩は返してもらうというスタイルでしょうか。

得をしたとすれば、欧米がプーチン大統領との対話に苦慮する中、プーチン大統領が唯一いうことを聞きそうな相手という認識を国際的に作り上げ、対プーチン大統領問題におけるフィクサー的な役割と認識を得たと思われます。

それをきっかけに、アメリカからの圧力を弱めさせ、台湾問題への欧米の注意力が削がれている間に、いろいろと工作できる素地を作っていると思われます。ここでは、ウクライナの悲劇の背後で、ちゃっかりと得をしていると言えるでしょう。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • プーチンの狂気を悪用する、ウクライナ紛争で“得をした”人物リスト
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け