プーチンの狂気を悪用する、ウクライナ紛争で“得をした”人物リスト

 

そして、“当事者”ロシアも、ウクライナ問題に忙殺されているかと思いきや、しっかり日本に対する圧力は忘れていません。

それは、北方領土問題の“終結”に向けた圧力を強化するという動きです。ここで“終結”というと、日本的には「北方四島の返還」を意味するかもしれませんが、ロシア側の話では、メドベージェフ元大統領の表現を借りると「北方領土問題に関する一切の議論の打ち切り」を意味します。

このような事態に対して日本の国家安全保障・外交的観点からどのような措置を取るのか。しっかりと明確に打ち出さなくてはなりません。

さて、さらにcontroversialな話題に移りましょう。

今回のウクライナ紛争で得をしたのはだれでしょうか?

最初の候補は、アメリカのバイデン大統領と政権です。

2021年1月に大統領に就任後、大方の期待に反し、バイデン大統領のパフォーマンスは芳しくありません。芳しくないどころか、もしかしたら、状況を悪化させているとも思われます。

国内の問題に敢えてコメントはしませんが、コロナ対策をめぐる動きは決して褒められたものではなく、あれだけ批判したトランプ政権での方針を丸のみにしただけとも言われています。

外交面では、America is backと国際協調への復帰をアピールし、欧州の同盟国を安心させたかと思えば、全く相談することなく、アフガニスタン・イラクからの米軍の完全撤退を強行し、アフガニスタンではタリバンの復権を許し、ISを生き返らせたと言われています。

そしてイラクでは、部族間での対立を再燃させ、イランからの影響も強まった結果、国内の治安は悪化の一途を辿っています。

散々、かき回しておいて、見捨てるという“お得意の”外交上の失敗を犯してしまい、「世界の秩序を強引にでも安定させようとした米国の影響力は衰弱した」と揶揄されることになりました。

しかし、今回、憎きプーチン大統領がウクライナへの侵攻を行ったことで、迅速に対応し、矢継ぎ早に制裁措置を発動し、国際社会を巻き込んで対ロ包囲網を掲載しました。

内幕については詳しいことは分かりませんが、ウクライナ紛争の勃発を機に、弱体化がささやかれていた米国のリーダーとしての資質を回復するチャンスを掴んだと見ることができます。

「ちょっと手際が良すぎませんかねえ」と違和感を抱いていることは以前お話ししましたが、実情はともかく、分裂構造が鮮明化していた米国内では、分裂していた議会を一つにまとめるwe are united効果を作り出すことが出来ました。

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現時点までは、ウクライナのゼレンスキー大統領が切望するウクライナ上空を飛行禁止区域設定するというカードは切っていませんが、状況によっては、いつでもそのカードを切ることが出来る環境を、米国議会および世論、そしてメディアに作り出したと思われます。

それは、結果的に、絶対的に不利が噂されていた今秋の中間選挙に向けての助走が付いたという見方もされています。

まさに議会での生活が長く、いかに議会において波を起こすかを知り尽くしているともいえるバイデン大統領のなせる業と言えるかもしれません。

そして、今回の紛争を“引き起こした”プーチン大統領に対して、断固とした対応をアピールすることで、就任来、ささやかれているウクライナ・ゲートとも言われるバイデン一家(特に息子のハンター氏)の疑惑を覆い隠す役割もあるのではないか、という穿った見方も出てきているくらいです。

単純に「だからバイデン大統領は得をしている」と言い切るのはやりすぎな気もしますが、経済が悪化しても非難の矢面に立たされる環境を回避できていることもあり、あまり損の要素が見当たりません。

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