プーチンの狂気を悪用する、ウクライナ紛争で“得をした”人物リスト

 

次に「得をした」と考えられるのは、エルドアン大統領のトルコです。

ロシアとはつかず離れずの関係を保ってきたトルコですが、ここにきてNATOの加盟国でありながら、NATOの他の加盟国とは決して良好な関係を保つことが出来ておらず、NATO内での発言力を高める狙いから、ロシアからS400を購入し、NATOの核弾頭が配備されているトルコ空軍基地にそれを配備するという、なんとも大きな賭けに出て、ロシアともパイプがあることを“証明”しています。

その立場を活かして、今回、ロシアとウクライナの仲介役を買って出ました。ここまでの調停は不発と言えますが、なかなか打開策が見つからない中、「トルコここにあり」と言わんばかりに、外交上のプレゼンスを高めたと評価できるでしょう。

これにより、外交的な孤立状態からの脱却と、キャスティング・ボートを握る重要な位置への回帰が可能になり、NATOから顰蹙を買っていた状況から一転、ロシア・プーチン大統領と直に話が出来るリーダーとしての役割への転身を図りました。

実際には、ロシアとの微妙な緊張関係を用いて、欧米とロシアとの間で面白い動きを続け、経済的にもおいしい役回りを獲得しています。

その最たる例が、Kargu2に代表されるドローン兵器のウクライナ軍への提供です。

ここで一点、はっきりとさせておきたいことがあるとすれば、トルコを含め、各国がウクライナに向けて行う軍事支援は、決して無償のものではありません。

各国からウクライナ政府への供与の段階ではコストは発生していないようですが、各国が武器を調達する段階で、兵器製造の企業はしっかりと対価を受け取る、あくまでもビジネスを実施しています。

今回の最新鋭と噂される各種ドローン兵器も、対ロ戦線で効果を発揮させ、その効果を可視化させることで、製造元の軍事産業企業のSTMへの発注がここ2週間ほどで爆発的な増加を記録しているそうです。

まさにちゃっかりと得をしています。

さらには、紛争下でロシアとウクライナの鉄鋼が事実上破綻した状態下で、一気に国際マーケットの主力に上り詰めたのがトルコ鉄鋼業界と言われており、高まる需要を背景に高値での取引を正当化でき、ここでもまた儲かる仕組みが構築されています。

かなり皮肉っぽく聞こえるかと思いますが、学ぶところが大いにあります…。はい。

フランス・マクロン大統領も、実は今回のウクライナ紛争で徳をしたと思われる一人です。「最もプーチン大統領と会っている男」という演出で、フランスのリーダーシップを誇示しています。

今年に入ってプーチン大統領との“会議”の数は20回ほどに達していると言われています。しかし、実際には成果は残すことが出来ておらず、プーチン大統領からはまともに相手にされず、ただウクライナ侵攻の準備時間を稼がせただけという辛辣な分析がされていますが、外交上の“実績”をアピールし、それを自らの大統領選での支持率急回復に利用していると言えます。

一時は極右勢力の候補に対して劣勢が伝えられてきましたが、極右勢力側の内紛も幸いして、今では支持率トップを走っており、このままいけば来月の大統領選挙での優勢が続くものと思われます。

そして、ポジティブな副産物として、予てより主張していた欧州防衛軍の創立を実現する見込みです。

トランプ政権時代に「もうアメリカには頼れない。自らの力で防衛する力を欧州は持つべき」と主張したのが起こりですが、当初、多くの反対に晒されていたアイデアは、今回明らかにされたロシア・プーチン大統領の“狂気”に直面したことで、一気に支持が広がったとされています。もちろんその旗振り役を買って出たことのアピールは忘れずに。

しかし、フランスの立ち位置はとても興味深いものです。欧米諸国や日本などが挙って対ロ経済制裁を決行し、ロシアからの撤退を迅速に行う中、フランス企業はまだロシアに留まり、批判をもろともせず、歴史的に存在しているフランスとロシアの不思議な関係をベースにビジネスを継続させています。言い換えると、制裁の網破りを平然と行い、経済へのリスクを、他国に比べて軽減させることも忘れていません。

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