もともと65歳で貰うはずの年金をそれ以前に貰うようにすることを「年金の繰上げ」といいます。意外と利用している人は多いといいますが、実際に年齢が近くなると「どっちにしよう」と悩んでしまうようです。そこで今回は、メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが年金の繰上げ制度について詳しく解説していきます。
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新しい減額率になった年金の繰上げ制度と、年金を早めに貰えるようにした歴史。
1.なぜ早く貰うと年金を減額する必要があるのか。
老齢の年金は年金受給資格期間10年以上を満たして、支給開始年齢に到達し請求すれば支給されます。
老齢の年金は本来は65歳からの支給ですが昭和36年4月1日以前生まれの男子、昭和41年4月1日以前生まれの女子が厚生年金を貰う時は65歳前から支給されたりします。
2025年からは男子が完全に65歳支給となり、2030年からは女子も完全に65歳からの支給になります。
2030年でようやく60歳から65歳への厚生年金引き上げが完了するわけです。
実際の引き上げ開始は2001年から始まったわけですが、2030年までに29年かかってる事になりますね。
さて、ひと昔前までは60歳で定年退職して、60歳から年金を貰いながらのんびり暮らすという形が一般的に考えられていました。
しかし平均寿命の延びが著しくなっていき、少子高齢化のスピードの速さも重なって、昭和の後半あたりから年金給付費が急増し始めました(昭和45年は1兆円→昭和55年は10兆円→平成2年は24兆円→平成12年は41兆円…現在は約60兆円)。
そこで、支給開始年齢を引き上げつつ、60歳支給のままだった厚生年金を65歳へ引き上げる事は重要な課題となりました。
また、60歳から65歳に引き上げるにおいて、人生80年の時代はせめて65歳までは働こうという事を目指すようになりました。
継続雇用の推進は無年金期間の収入を確保するためでもありました。
現在は70歳まで働こうという努力義務が企業に課されています。
このように、今後は65歳前から年金が貰えないのか…という、まだまだ年金受給は先なんだと落胆する人もいますが、貰おうと思えば65歳前から貰う事は出来ます。
一番早くて60歳から貰う事が出来ます。
これを年金の繰上げといいますが、年金受給者のうちそこそこ多くの人が利用しているのを見かけます。
本来の支給開始年齢よりも早くもらえるなら早く貰っておきたい!と思ってしまいそうですが、ただ単に早く貰いたいから早く貰うという事になると痛い目を見る事になりかねません。
なぜなら早く貰う分、減額されるからです。
令和4年4月1日以降(昭和37年4月2日以降生まれの人に限る)に繰上げする人は1ヶ月早く貰うごとに0.4%の減額(従来は0.5%だった)となり、本来65歳から貰う人が60歳から貰おうとすれば0.4%×60ヶ月=24%の年金減額となります。
早く貰うペナルティと考えればわかりやすいですね。
本当は「ペナルティ」ではなくて65歳から平均余命まで受給する年金と、繰上げて貰い始めた時から平均余命までの受給総額が同じになるように調整されてるだけではあります。
簡単に示すと65歳から20年で貰う年金総額と、60歳から25年間で貰う年金総額が等しくなるようにしているという事です。
貰い始めてから平均余命までの受給総額は同じとはいえ、早めに貰うとその月々に貰う年金額が下がってしまう事になります。
月の年金額が下がるという事はその時々の生活が厳しくなりかねないので、特に早く貰う理由が無い人にはお勧めはしていません。
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